韓国新大統領が就任。関係各国はそれをどう思う?【政治学者が見る世界の今】

比較政治や国際政治経済を専門とする政治学者の筆者が、世界の情勢を考える当シリーズ。1回目の今回は、韓国の新大統領「ユン・ソンニョル氏」の就任と、関係諸国の思惑などに注目していきたい。※写真はすべてイメージです

韓国で新大統領が就任。日間関係の改善がなるか

2022年5月、韓国でユン・ソンニョル新大統領が就任した。5年ぶりの保守系政権で、文政権で悪化した“戦後最悪の日韓関係”を健全な状態に戻す強い意欲を示している。

日韓の間では徴用工や慰安婦など多くの課題があり、また、韓国議会ではねじれが生じており、ユン政権がどこまで日韓関係を改善できるか不透明な部分もある。しかし、180度異なる新政権が誕生したことを、関係各国はどのように感じたのだろうか。その本音を探ってみたい。

バイデン政権(米国)の思いとは?

まず、バイデン政権の米国は非常に“好都合”と捉えている。長年、米国の本音には、「これから中国との対立が激しくなるのだから、軍事同盟国である日本と韓国はあまり揉めないでくれ、仲良くしてくれ」という切ない思いがあった。

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米国は日韓とのトライアングル関係を機能させることで中国に対抗するというビジョンがどうしてもあるので、今回のユン政権の誕生を非常に好意的に受け止めている。今後は冷え込んだ米韓関係も大きく改善することは間違いないだろう。

岸田総理も関係改善の姿勢を示す

また、基本的には日本も好意的に受け止めている。日韓の間には問題はあるものの、台頭する中国や懸念される台湾有事、北朝鮮など、今日、両国は協力を強化するべきベストタイミングにある。岸田総理も日韓関係は待ったなし!との姿勢を示し、韓国との関係を改善させる意欲を示している。

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しかし、ユン政権が発足したばかりで今後どう出てくるか不透明な部分もあり、そこはそこで慎重姿勢を崩していない。だが、全体的にはプラスと受け止めていることは間違いない。

韓国をけん制する中国の立場とは

一方、中国はかなり神経をとがらせている。最近、中国と韓国の外務大臣がオンライン会談を行ったが、中国の外相は米国と組んで中国に対抗すべきではない趣旨の発言をし、韓国をけん制した。

ユン政権が日本や米国との関係を重視する姿勢を示していることで、中国はこれまでの中韓関係が壊れ、韓国が米国陣営に入ってしまうことを警戒している。実際、おそらく中韓関係はこれまでよりは冷え込む可能性が高く、中国は正直なところ“まいったなー”と感じており、今後のユン政権の対中姿勢を注視することになりそうだ。

以上のように、日本、米国、中国で韓国新政権への思いは異なる。言い方を変えれば、韓国新政権が日本周辺の情勢に与える影響も大きいと思われ、今後はユン政権の行方によって日本を取り巻く安全保障環境も大きく変化することが予測される。韓国新政権はどのような外交政策を進めていくのだろうか。

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