横浜・有隣堂本店でマルシェ試行 書店で野菜販売、不思議な相性

「有隣堂本店マルシェ」でお客とやり取りする柳沢さん(左)=横浜市中区

 “ハマっ子の本棚”とも言える有隣堂伊勢佐木町本店(横浜市中区)で、野菜を販売する試みが始動している。より好奇心を刺激する仕掛けを模索する有隣堂と、野菜の目利きがタッグ。今はまだ月1回の試行だが、書店と野菜の不思議な相性も見えてきた。

 7日午前、パート女性(60)=同市磯子区=が同店に立ち寄った。出勤途中の気分転換。いつも店内をのぞき、気に入った小説などがあれば購入する。

 だがこの日、手にしたのは小田原・下中地区のタマネギだった。入り口の一角が「有隣堂本店マルシェ」となり、色鮮やかな5種類の野菜とレシピカードが並んでいた。

 女性の目に留まったのは、タマネギを丸ごとレンジで蒸すレシピ。「簡単だし、やってみたい。料理がワンパターンになってしまいがちなので」と笑った。

 「インターネットでいろいろ買えるからこそ、『店に来てみたら楽しかった』と思ってもらえる何かを探しています」。有隣堂事業開発部の伊藤博美さん(52)が言う。

 娯楽があふれ、消費者は忙しく、目的買いが目立つ時代。実店舗を訪れる人たちに、思いがけない情報や出会いを提供するには─。特に本や雑誌での関心が高い料理や健康の分野で、もう一歩踏み込んで喜んでもらおうと野菜販売に関心を持っていたところ、つながったのが業務用青果卸売業のつま正(同市神奈川区)だ。

 レストランやホテルなど料理のプロを相手にこだわりの野菜を扱う同社は、スーパーでは見かけない珍しい野菜も得意としており、差別化も図れる。

 コロナ禍で一般消費者向けの販売にも力を入れるつま正にとっても、同店での販売は貴重な機会。両社の橋渡し役となったぴあ(東京都渋谷区)も含め、3月からマルシェを始め、うち2回は売り切れた。

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