ライバル勢の予想以上の速さに驚く佐藤琢磨「彼らのスピードには全然追いつけなかった」

「今日はショックでした。心が痛いくらい‥‥(苦笑)」。 

 予選2日目が終わった佐藤琢磨は、ここまでの好調がすべて吹き飛んでしまったような意気消沈した様子だった。

 第106回インディアナポリス500マイルレースの予選2日目。今日で5月29日の決勝33グリッドが決定する。

 昨日トップ12台に入れなかったマシンは13番目から33番目までのグリッドが決定しており、ポールポジションから12番目のグリッドが今日の予選で決まる。

 予選1日目でギリギリ12番手に滑り込んだデイル・コイン・レーシング・ウィズ・リック・ウェア・レーシングの佐藤琢磨。プラクティスをすべてトップで終えると言う順調な出だしだったが、予選1回目のタイムをペナルティでタイム抹消という波乱もあり、トップ12脱落も危惧。2度目のアタックでターン2の壁に当たりながらもギリギリ12番手に食い込み、まだ運は琢磨に味方していた。

 予選2日目は前日よりもかなり涼しくなり、朝にオンエアされていたF1スペインGP決勝を見ながら、口々に今日は寒いねと言い合うような天候だった。

 12時30分から90分間設けられたプラクティスセッション。ここで各マシンは予選同様の4周の計測ラップを走って、予選本番に備えた。だが琢磨とチームは、プラクティス開始直後には現れず、セッションが半分ほど終了してから、ようやくマシンが姿を現した。

 琢磨はまず最初に4周の計測ラップをし、ピットに戻って調整してから、再度コースインしたが、2度目の走行はすぐにピットに戻った。最後にもう一度コースに出ると4周をしっかり回り、4番手でこのプラクティスを終えた。

スコアリングパイロン(タワー)で順位を確認する琢磨
プラクティス走行後、マシンを入念にチェックする佐藤琢磨

 予選は12台のうち速い6台が生き残り、最後のファストシックスに臨む。順調に行けば琢磨のファストシックス入りも問題ないだろうと思われていた。

 だが予選1日目から際立ってきたのが、チップ・ガナッシ勢の速さだった。チーム5台中5台すべてのマシンがトップ12に入っており、絶対王者スコット・ディクソンを中心に完璧なまでの包囲網を敷いてきたのだ。

 12台の中でガナッシが5台、アロウ・マクラーレンSP2台、エド・カーペンター・レーシングが2台、そしてデイル・コインとアンドレッティ・オートスポート、チーム・ペンスキーが1台ずつという内訳だ。この内容を見てもガナッシの強さがわかる。

予選アテンプトの準備を待つ佐藤琢磨

 予選2日目のトップ12セッションは初日12番手だった琢磨のアテンプトから始まった。

 琢磨は1周目232.165mph、2周目231.746mph、3周目231.450mph、4周目231.321mphを出して終えた。プラクティスに比べれば平凡なスピードだったが、それは気温の変化が影響しているものと思われた。

 だが、琢磨の後からアテンプトしたウィル・パワーは琢磨を上回れなかったものの、その次のスコット・ディクソンをはじめ各車はどんどんと琢磨のタイムを上回り、8番目にアレックス・パロウが 233.347mphを出した時に、琢磨は7番手となりファストシックスには進めずに、敗退となった。結果琢磨は10番手となり、4列目イン側のグリッドが決定する。

 琢磨がショックを受けたのは単にポジションではなく、ガナッシ勢とライバルたちとのスピード差だった。

 特にファストシックスに進んだドライバーたちは、最初のラップで234マイル台に乗せ、平均スピードを233マイル台にまとめているのだ。琢磨はタイムの落ちを最小限に止めるセッティングで4ラップの平均を揃える狙いだったにしろ、ガナッシ勢とは1ラップで2マイル近いスピード差があったのだ。

「今日は朝のプラクティスもしっかり走って、少しマシンが滑るくらい攻めていたんですが、まだちょっとスピードが足りないかなと思う程度でした。しかし予選になって蓋を開けてみたら、彼らのスピードには全然追いつけなかった」

「予選の時間帯の温度や風にもしっかり合わせていったつもりだったし、できることはすべてやって、このスピード差はショックでしたね。ちょっとどうしていいかわからないくらい(苦笑)」

「僕としてデイル・コインのクルマは予選が速いというのを、ちゃんと証明したつもりですけど、ガナッシのスピードはそれ以上だった。この予選での彼らのアドバンテージが、そのまま決勝でのアドバンテージになるかはわかりません」

「ですが、2020年のようにフロントロウからスタートするのと、4列目からスタートするのではセッティングも変わってくる。大変な作業になると思います。月曜と金曜のプラクティス2回で決勝に合わせた準備をして、レースに臨みたいですね」

 予選では確かに負けを認めざるを得ない。だが、これも500マイルのスタート順を決める争いに過ぎず、戦いはこれから始まる。本当の決着は1週間後だ。

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