安全で魅力ある日高川に 御坊市でシンポジウム

防災と都市計画について基調講演した和歌山工業高等専門学校の櫻井祥之助教(和歌山県御坊市薗で)

 「日高川流域シンポジウム」が21日、和歌山県御坊市薗の市民文化会館であった。専門家による基調講演と流域の関係者によるパネル討論などがあり、日高川の魅力と流域での暮らしを考えた。

 日高川では「日高川流域治水プロジェクト」として、関係者が共同で流域全体の水害を軽減させる取り組みを始めている。シンポジウムは、日高川を安全で魅力のあるものにするため取り組もうと開いた。

 基調講演は、和歌山工業高等専門学校(御坊市)環境都市工学科の櫻井祥之助教が「防災と都市計画の連携によるまちづくり」と題して話した。交通、商業施設といった生活機能が近接している、効率的なまちを目指す都市のコンパクト化が全国共通の課題であるとした上で、防災を踏まえた都市計画を紹介した。

 防災と都市計画を考えるためのキーワードとして「生命は確実に守る、そして生活の維持を目指す」を挙げ、災害リスクの検証や対策、被災後のまちづくりを見据えることが必要と述べた。

 流域の治水を考える上で、ハザードマップは完全ではないこと、地域ごとのリスクへの考え方をまとめることなどが重要とした。防災と都市計画を連携させることで、リスクの低い地域での居住が進むという好循環も示した。

■地域防災で討論

 後半は櫻井助教を進行役に、流域で活動している組織の代表ら4人による「今後の日高川について」をテーマにしたパネル討論があった。

 安全のために必要なことについて、全国商工会青年部連合会の石倉大裕会長は、実家である土産物店(日高川町)で頻発する浸水被害に触れ「災害対応を実体験を通して地域で共有していきたい」と話した。

 御坊市自主防災組織連絡協議会の酒本和彦会長は、行政との連携といった経験談を語り「(防災のために)できることとできないことを見極めていきたい」と述べた。

 日高振興局建設部の柳岡太部長は県の施策として、流域全体を見据えた治水を進めるとともに、防災に関する情報の周知を図りたいとした。

 日高川の魅力を生かした、住み続けられるまちづくりについても意見交換。アユの保護活動とともに子どもたちへの講話もしている日高川漁協の前田豊温参事は「流域の住民がその魅力を認識したり観光客に発信したりしながら、後世に残すべき価値があるものだと教えていくことが大切だと思う」と述べた。

 シンポジウムではこの他、和歌山地方気象台の山本善弘台長が「近年の気候変動について」、県県土整備部の宗琢万河川課長が「日高川の整備等について」をテーマに話した。

日高川流域での活動や生活について4人のパネリストが意見を交わした

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