広島G7サミット決定 長崎県内の被爆者ら歓迎 核廃絶へ具体策なく不満も

 岸田文雄首相が23日の日米首脳会談で、被爆地広島で来年、先進7カ国首脳会議(G7サミット)の開催を表明したことについて、長崎県内の被爆者らは「原爆の実相を各国首脳に知ってもらう機会になる」と歓迎。一方、核兵器廃絶の具体策が示されないことに不満の声も上がった。
 実現すれば被爆地として初となるG7サミット。長崎原爆被災者協議会(長崎被災協)の田中重光会長(81)は「各国首脳は被爆者と語り、核の恐ろしさを知って」と望む。ただ首相は「核なき世界」を目指すとした半面、「拡大抑止」強化でバイデン米大統領と一致。田中氏は「言葉と行動が逆。首相は核廃絶を現実的に進めると言うが、具体的な外交努力が見えない」と苦言を呈した。
 一方、長崎日米協会顧問で被爆者の鈴木一郎氏(89)は「核兵器は廃絶すべき」としつつ、ロシアのウクライナ侵攻を念頭に「核の力で支配を高めようとする国に対抗するため現状では核抑止力は必要」と理解を示した。G7サミットについて「岸田首相の地元広島だけでなく、長崎も訪れてほしい」と訴えた。
 2016年、広島を訪れたオバマ元米大統領の演説を現地で聴いた元高校生平和大使の安野伊万里さん(22)=同志社大大学院1年=は「当時は『大きな一歩』に思えたが実際は核軍縮が進まず、今ではむしろ使われる危機感が強まった」。岸田首相が中国や北朝鮮の軍事的脅威に対応するため、防衛費の増額に言及したことに「(アジアで)軍事力を高め合うサイクルに陥るのでは」と危惧する。
 日米同盟の深化を確認した首脳会談。岸田首相は「反撃能力(敵基地攻撃能力)を含め、あらゆる選択肢を排除しない」とした。米軍の動向を追う佐世保市のリムピース編集委員、篠崎正人氏によると、中国、ロシアとの関係を背景に、防衛力強化に向けた米軍再編の動きがあり、日本も自衛隊の役割拡大を迫られる可能性がある。篠崎氏は「防衛力強化は結果的に地域の不安定化につながる。外交や経済など平和的な解決を目指すべきだ」と求めた。
 大石賢吾知事と田上富久長崎市長は23日、G7サミットの広島開催を歓迎するコメントを出した。


© 株式会社長崎新聞社