長崎IRの行方 コロナ後の起爆剤 佐々木一彰氏

区域整備計画審査へ 識者インタビュー<下>

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佐々木一彰氏

 -新型コロナウイルス禍で外国人観光客は激減している。カジノを含む統合型リゾート施設(IR)を整備する必要はあるのか。
 政府の入国規制で外国人観光客は減っているが、現状が続くとは言い切れない。IRは客単価が高い旅行者を呼び込む効果が期待でき、コロナ禍で痛んだ観光産業を建て直す起爆剤となる可能性がある。観光の質を高めるカードの一つとして持っておくべきだ。

 -コロナ禍でオンラインカジノが急速に広がっている。競合しないのか。
 日本人であれ、外国人であれ、現在は国内でオンラインカジノをすること自体が違法行為とされる。オンラインが解禁されるのなら話は別だが、IRへの大きな影響はないのではないか。
 オンラインとリアルのカジノでは人間が感じ取る情報の質や量が全く違う。IRにおけるカジノは、単にお金を稼ぐ行為ではなく、ゲームを純粋に楽しむことだ。世界最高水準のMICE(コンベンション)施設やホテルなどを備え、さまざまなエンターテインメントも堪能できる。

 -国にIR区域整備計画の認定を申請したのは、長崎県と大阪府・市の2地域だけだった。
 コロナ禍がなければ、海外事業者からの潤沢な投資があり、手を挙げる地域はもっと多かったはずだ。今回はタイミングが悪かった。ただ、今年の大型連休は観光地がにぎわいを取り戻し始めた。世界経済がコロナ後に向かっていることは間違いない。

 -国が追加で申請を受け付ける可能性はあるか。
 国は「最大3カ所を認定する」としている。いわゆる「補欠募集」を始める可能性はあるだろう。

 -長崎IRは資金調達先の企業名が公表されていない。収支計画は妥当と言えるか。
 非公表に懸念は出たが、結果的に地元議会は計画を認めた。県や佐世保市は早い時期から誘致活動を始め、市民や議会に説明をしており、その成果が出たと言える。ただ、個別の収支計画への評価は、さまざまな影響を与えかねないのでコメントを控える。

 -ギャンブル依存症などの懸念事項対策は。
 国はIRの設置に向け、ギャンブル等依存症対策基本法の整備を進めた。「負の側面」にもしっかりとした対策が講じられるはずだ。
 長崎IRは、中核事業者の「カジノオーストリアインターナショナルジャパン」などが、(拠点の)欧州で培ったノウハウを日本向けにカスタマイズして対応するだろう。

 -審査のポイントは。
 事業を継続できる運営体制を構築できるかどうかに注目している。長崎IRは九州の周遊観光を促進するとしており、その実効性も問われる。

 【略歴】東洋大教授 佐々木一彰(ささき・かずあき) 1967年生まれ。神奈川県出身。大阪商業大地域政策学博士。専門は経営学。国際観光や統合型リゾート、カジノなどを研究。長崎県・佐世保市IR推進協議会の有識者会議委員を務めた。