モンツァでWECデビューを果たすプジョー9X8、現在はホモロゲーションの最終段階に突入

 5月20日(金)にWEC世界耐久選手権第4戦モンツァで『プジョー9X8』をデビューさせることを発表したプジョーは、現在“リヤウイングレス”のル・マン・ハイパーカー(LMH)マシンが「ホモロゲーションの最終段階」にあることを明らかにした。

 今年7月のレースデビューが決まったプジョー9X8のレーシングバージョンは、2021年7月に公開されたコンセプトバージョンからいくつかの修正が加えられた状態で、先週金曜日にお披露目された。

 ポルトガルのアルガルベ・サーキット(ポルティマオ)でのテスト中に明らかにされたプロジェクトの最新情報では、さらなるトラックテストが計画されているが、プジョーのテクニカルディレクターであるオリビエ・ジャンソニは、開発チームはデザインとオペレーションの面でこのクルマに満足していると語った。

 トヨタGR010ハイブリッドと同じ4輪駆動のハイブリッド・プロトタイプであるプジョー9X8の注目すべきポイントは、当初の計画どおりにリヤウイングを持たない車両デザインでレースに参入することだが、必要なダウンフォースレベルを生成するためにいくつかの新しい空力デバイスが追加されている。

「私たちはこのコンセプトを数カ月前から信じてきた。それは長いことだ」と述べたジャンソニ。

「我々はこのコンセプトに取り組み、改良を加えてきた。私たちはトラックでの最終的な検証を欠いていただけだ。しかしそれも完了し、リヤウイングない状態でレースを開始する」

「私たちは昨年末からこのクルマのテストを続けてきた。さまざまな場所で1万km以上のトラックテストを実施してきた。だが、まだ充分ではない。もっとやりたいんだ」

「今後数週間はレース前にできる限り多くのテストを行うつもりだ。チームにとっては、とてもハードでタフなテストになる」

「その一方で、我々はマシンのホモロゲーションプロセスも進めてきた。フロントのクラッシュボックスとモノコックのクラッシュテストを行い、リヤ構造、ステアリングコラム、バッテリーもクラッシュテストを終えている」

「今は、ホモロゲーションと検査の最終段階に入っているんだ。数週間のうちにホモロゲーションが取得できることを期待している」

ポルティマオで公開されたプジョー9X8のレーシングバージョン

■“合法化”のためにいくつのか変更を余儀なくされる

 ジャンソニは、ここ数カ月の間に行われた車両のデザインの変更について、「微妙なもの」と表現した。

 コンセプトカーとは対照的に、車両中央部を走るエンジンフードカバー、通称“シャークフィン”は大きくなり、このフィンの前にあるエアインテークは台形から三角形になっている。

 また、リヤの両サイドには小さなバーチカルフィンが装着された。さらに、サイドミラーは当初はアーキテクチャーに完全に埋め込まれてたが、現在はホイールアーチの後ろから伸びる格好となっている。これらの変更について、ジャンソニは次のように説明した。

「一般的にコンセプトバージョンのクルマを合法化するためには、いくつかの点を少し変更しなければならない」

「例えばヘッドライトがその良い例だ。3本の爪によってプジョーのサインは何とか残すことができたが、より合法的にするためにクラスターを再配置する必要があった」

「次にいくつかのエアロ形状を用意してBoP(バランス・オブ・パフォーマンス/性能調整)のウインドウに収まるように調整を行った。その中でシャークフィンは少し大きくなっている」

「クルマのサイド部にもフィンが付いたが、クルマを合法化させるためにはこれをしなければならなかった。マシンが安定していることをシミュレーションで証明する必要があったためだ」

「これはレギュレーションの中でもかなり興味深く、複雑な部分であり、そのためにクルマに余分な要素をすべて盛り込む必要があった」

■最後の仕上げの段階へ

 プジョーのCEOであるリンダ・ジャクソンは、プジョー9X8の最終レーシングバージョンを5カ月前にテストを開始したものよりも「より成熟した」クルマだと表現している。

「コンセプトの形態をレースカーに移行させるという約束は、本当に実現できたと思います」と、彼女は語った。

「昨年12月に行われた最初のセッションでそれを見て、3月のマニ・クールテストにも行きました。私はそこでクルマが違って見えました」

「私から見て、マシンがより成熟しているように見えました。チームも変わりました。彼らは団結力のあるチームになり、今ではレーシングチームです。彼ら今、レースをしたいと思っています」

 ステランティス・モータースポーツ代表のジャンマルク・フィノーは、1万キロに及ぶテスト走行はヨーロッパのサーキットで25日間にわたって行われたと付け加えた。

 また、同氏は「今はあらゆる問題を解決するための最後の仕上げに近い状態」であると述べた。

「我々は、クルマのセットアップとバランスの最適化に取り組んでいる」

レーシングバージョンのプジョー9X8ではコンセプト仕様と比較してシャークフィンが大型され、後部両サイドにバーリカルフィンとフラップが追加された

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