毎年6月から金額が変わる「住民税」の仕組み、所得税との間にある半年の溝とは?

日本人は、国際的にもマネーリテラシーが低いと言われているのをご存じですか? なんて……嘆かわしい!

毎週叫び続ける税理士芸人、税理士りーなです。日本のマネーリテラシー向上のために、税理士でありながら、お笑い芸人として活動し、楽しく税の話を連載しています。

「税を知るものが貯蓄を制する!」とはいえ、何から手をつければよいのかわからない方は、まずは自分の身近な税金、給与から天引きされている「所得税」と「住民税」の関係について知りましょう!

会社員の方は、事前に所得税・住民税が給料から差し引かれて、残った金額が手取りとして振り込まれています。そのため、自分が税金を1年間でいくら払っているのか、知らない方も多いかもしれません。あなたはいくら払っているか、答えられますか?

「税の知識でできる節約=節税」のために、今回は所得税・住民税がどのようにして決まっているか、その仕組みについてお伝えします。


所得税と住民税、税の種類が違う?

所得税とは、個人の「所得(もうけ)」に対してかかる税金で、「国税」の一種です。1月から12月まで、1年間全ての所得を計算し、給与の方は年末調整で精算します。概算で毎月分を少し多めに引いておいて、11月分までで引きすぎたから年末で返ってくる、というパターンが多いと思います。12月の給与が還付でちょっと増えるから嬉しいという方も多いのではないでしょうか。

なかには「年末調整の還付分は妻に内緒で自分へのお小遣いに……」なんて話も聞きます。お互いの年末調整の還付額を知らないというご夫婦の皆さん、ここは厳しくチェックですよ!

また会社員でも、医療費控除を受ける場合や、副業の収入があって会社の年末調整だけでは所得税の計算ができない方は、1年分の所得税の計算について、詳細を書いた「確定申告書」を翌年の2月16日から3月15日までに提出します。

一方、住民税は住んでいる地域に納める税金「地方税」の一種です。都道府県や市区町村に納めます。所得税の計算を行った「年末調整」や「確定申告書」のデータを使って、お住まいの都道府県や市区町村が勝手に計算してくれます。そのため、自分で住民税の手続きをすることはほとんどありません。

そして、ここからが知識でできる節約ポイントです! 所得税の節税を上手にできる人は、住民税も節税できるのです。

所得税と住民税にある「半年の溝」

所得税は「超過累進税率」という階段式に変動する税率のため、税金がかかる分の金額を減らす=控除を増やすことで節税になります(詳しくは、前回の記事をご覧ください)。

そして、所得税で使えた控除は、住民税にもちゃんと効いてきます。節税のポイントは、「所得税から芋づる式に住民税が計算される」です。所得税の知識を備えて節税することで、住民税も節税できるのです。

例えば、扶養控除は、所得税で38万円が所得(もうけ)から差し引かれますが、住民税でも同じように33万円の控除が受けられます。住民税の税率は一律10%なので、正しく控除の知識を身につけておけば、33,000円お得になります。

ここで注意すべきは、所得税は1年分の計算をして、年末で精算または翌年3月の確定申告で精算するのに対して、住民税は役所で計算した納税額が書かれた納付書が、翌年の5月頃に送られてくる、つまり半年遅れになるという点です。

会社員の方は、納付書に書かれた1年分の税額を6月から翌年5月までの1年間で納められるように、会社が毎月一定額(最初の6月だけちょい多め)を給与から引いて、納付しておいてくれます。5月までと6月・7月以降の「住民税」の金額が違いますので、ぜひ給与明細で確かめてください。

5月までの金額は、2020年1月〜12月の1年間の給与をもとに計算されたもので、6月以降の金額は、2021年1月〜12月の1年間の給与をもとに計算されたものです。このインターネット全盛時代に半年前なんて、えらい前の給与がベースになっていますよね?

仮に2021年は月収100万円だったのに、2022年は月収10万円になったら、さぁ大変! 月収100万円時代の収入を基本とした住民税が2022年の6月から徴収されるので「え、私の手取りほぼゼロ!?」なんてことが起こります。 なんて……嘆かわしい!

住民税節税の心得

会社員として長年過ごしてきた方は、若かりし日、入社した1年目を思い出してください。何が浮かびますか? 仕事ができずに悩んでいたこと? それとも当時付き合っていた恋人のこと? 当時の給与明細は、思い出されませんか?

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あの頃、あなたの給与明細の「住民税」の欄に、まぶしいほどに「0円」の文字が輝いていたこと、覚えていませんか? 覚えていたら素晴らしいです!

つまり、大学時代にバリバリバイトして、会社員顔負けに納税しまくっていた人を除く新入社員は、4月に入社して翌年5月までは住民税を納めていないのです。となると、逆のパターンがあるのも、わかりますか?

そうです、退職した後の住民税です。

3月末などで退職して転職せずにいると、思いがけず5月に「住民税を納めなさい」と、納付書が届きます。

「え、なに? コレ払わないとアカンの?」

そうです、払わないといけません。それは前年の1年間、せっせと働いて稼いだ分に対して、あなたが住んでいる地域が課する、正規の税金です。

有名な芸人さんが昔、急に売れっ子になったとき「宵越しの金は持たねぇぜ」と、入ってきたお金を全部使っていたら、後から税金の納付書が届いてビックリした、という話を聞きました。

皆さんも、あとからビックリしないように知識をしっかり身につけて、納付書が届いた時も「あぁ、コレね! 知ってる知ってる」と余裕の対応ができるようになってください。

ちなみに給与の年収が400万円なら所得税は年間約9万円、住民税は年間約18万円です。この住民税を12ヵ月で割って翌年の6月から毎月納付するので、給与から毎月天引きされる住民税額は1.5万円です。毎月ならさほど痛くないかも知れませんが、退職して「一度に18万円納めなさい!」と言われたら、かなり大変な金額ですよね。


もう一度言いますが、残念ながら日本人はマネーリテラシーが低いと言われているそうです。ここまで読んでくださった皆さんは、その中で1歩も2歩もリードしています!

これからも、税やお金の知識を身につけて、賢くお得に節税してくださいね!

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