京都市の財政難「原因は府にもある」と支援要求、府「本当に財政危機なのか」

多くの乗客に見守られてデビューした京都市営地下鉄烏丸線の新型車両。経営難の中、巨額の購入費に賛否両論の声がある(3月26日、京都市伏見区・竹田駅)

 財政破綻の危機だとして、敬老乗車証や動物園入園料などの値上げを相次いで決めた京都市。市や市議会には以前から「財政難の原因は京都府にもある」との見方があり、府に財政支援を求めている。府は市を救済すべきなのか。

 ■市営地下鉄

 3月26日、烏丸線の新型車両がデビューした。経営難を理由に運賃値上げが計画される中、12億円の車両購入費に批判も出たが、1981年の地下鉄開業以来の車両は老朽化が著しく、「更新は安全運行には不可欠」(市交通局)。2028年度までに信号などを含め計740億円の設備更新費がかかる見込みだ。

 市は、烏丸線の車両は近鉄との相互直通運転で木津川市なども走行していることや、東西線は宇治市(六地蔵駅)まで運行していることなどから、「府南部の発展にも寄与している」として支援を求める。

 だが府は消極的だ。地下鉄建設時の借金返済に年約7千万円を補助しており、一定の支援はしているとの立場をとる。また公営企業は運賃などの独自収入で運営するのが基本で、「経営難といっても独立採算が大原則」(府交通政策課)との方針を曲げていない。

 ■消防ヘリ

 消防ヘリの配備は国の通知で都道府県の役割と定められるが、府にヘリはなく、京都市消防局の2機が府内全域をカバーしている。関西広域連合が運用するドクターヘリは夜間には飛べないため、福知山市で3人が死亡、55人が重軽傷を負った露店爆発事故(2013年8月)では京都市のヘリが現地に飛び、重傷者を市内の病院に搬送した。

 年間コスト約4億円のうち、府負担分は1500万円。市が財政難に陥った12年前、門川大作市長が山田啓二知事(当時)に「全額と言いたいが、遠慮して折半と言うてますねん」と詰め寄ったこともあった。ヘリのない大阪府と兵庫県が、大阪市、神戸市のヘリに半額負担していることが念頭にあった。今は国の支援が充実されたこともあり、表だって「折半」を要求してはいないが、「適切な負担を求める考えに変わりはない」(市消防局)。

 府は、京都市外へのヘリ出動回数が全体の1割未満と少ないことを理由に、負担増には応じていない。交渉は未決着のままだ。

 ■他市町村との格差

 府には京都市以外の市町村を対象とした補助事業が複数残る。

 母子家庭に年1万1千~6万4千円を支給する奨学金は、京都市民は対象外。新型コロナウイルス対応の一環で、災害避難所の感染対策を充実させるための補助金(現在は廃止)も、京都市は外された。府は「京都市と他市町村では財政力が違う。弱い市町村を支援しなければならない」との認識だが、市には「京都市民も府民だ」との不満が根強い。近年、動物愛護センターや消防学校の共同化などで府市協調は進み、京都市財政にもメリットは出ている。しかし、府市の溝が埋まったとは言えず、交渉は続く。

 ■「府民税還元されていない」

 京都市や市議会には「市民の支払う府民税が十分還元されていない」との不満が根底にある。市が2018年度決算をもとに試算したところ、府民税収入2675億円のうち、市民と市内事業所が6割(1598億円)を納めたが、補助金などの形で市に返ってきたのは957億円(府が直接実施する警察、河川、教育関係を除く)にとどまる。

 一方、府は「府内の均衡ある発展」を重視する。財源が限られる中、京都市へ特別な支援をすれば、他市町村にしわ寄せが出かねないためだ。

 ■府から「本当に京都市は財政難なのか」の声

 府の公表する府内26市町村の20年度決算状況によれば、借金規模を示す「将来負担比率」は京都市が2番目に悪いものの、借金返済額をもとにした「実質公債費比率」は市より悪い自治体が9市町ある。他市町からは「京都市の苦しさも分かるが、都市との税源格差を是正してもらわないと田舎は成り立たない」「府補助金が削減されたら死活問題」との声が上がる。

 また自主財源割合の高さを示す「財政力指数」を見ると、京都市は0.81で3番目に高く、府の0.59よりも上だ。昨年4月現在の職員給与水準(ラスパイレス指数)も市の方が高い。両指標で比べれば府の方が財政難に見えるが、府は市のように多分野に及ぶ料金値上げや補助金削減は打ち出していない。「『財政破綻する』という市の訴えは、果たして当を得ているのか」(府幹部)との疑念も府庁内にはある。

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