「信頼醸成のため対話を」 核使用リスク削減でシンポ 長大レクナなど

核使用リスク削減について意見を交わす鈴木副センター長(左上)ら

 長崎大核兵器廃絶研究センター(RECNA=レクナ)などは23日夜、北東アジアでの核兵器使用リスク削減をテーマにオンラインでシンポジウムを開いた。同日あった日米首脳会談では、米国が核兵器と通常戦力で日本防衛に関与する「拡大抑止」確保で一致したが、同大教授らは抑止力の破綻リスクを指摘し、抑止の対象となる国との信頼醸成のため対話する努力を続ける必要性を強調した。
 レクナは米韓の研究機関と昨年度から3カ年で核使用リスク削減の政策提言をするプロジェクトを推進。初年度は安全保障などの専門家が「十分に起こりうる」ケースを検討し、発端となる事象から核兵器使用に至る25事例をまとめた。
 シンポは研究成果の報告を兼ねて開催し、約90人が聴講。鈴木達治郎副センター長が事例を分析した結果、相手の考えなどを誤認し、使用に踏み切るケースが多くみられると説明した。
 その点を踏まえ、早稲田大大学院アジア太平洋研究科の植木千可子教授は核抑止力の破綻リスクを指摘。「反撃する能力と意図があっても、そのことを相手に正しく伝えられるコミュニケーションと、状況認識の共有がないと抑止は成立しない。一定の信頼関係が重要」と語った。
 ロシアのウクライナ侵攻を巡っては、ロシアが「核の脅し」を強め、小型核を使用するとの懸念も出ている。長崎大の西田充教授(軍備管理・軍縮・不拡散)は「通常兵器の延長線上で核使用の結果を軽く考えている節がある。日本が被爆の実相を世界に伝え続けることが重要」と述べた。


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