本年度から新学習指導要領となった高校の家庭科で、新たに盛り込まれた「資産形成」の授業が栃木県内の高校で始まった。将来の生活設計をより意識させることを狙った改訂で、保険や税の優遇制度など実践的な内容も取り扱う。ただ、生徒からは「内容が難しい」との声も。授業を前向きに捉える教諭の一方、「投資経験がなく、身近なものとして語れない」と歯がゆさも漏れる。県教委は弁護士ら専門家を講師役として授業に派遣する仕組みを活用し支援していく。
「将来を見据えた収支計画が必要になるね」。今月中旬、栃木女子高の家庭科室。1年生の約40人を前に、家庭科の森下房枝(もりしたふさえ)教諭(45)は強調した。
消費生活に関する授業で、資産形成についても学習する。「お金に働いてもらう方法」として、保険や投資信託など実践的な手段を説明した。少額投資非課税制度(NISA)など、税制優遇制度にも触れた。
「1億円あったらどうする?」。冒頭、そんな話題でにぎやかだった教室は次第に静まった。渡辺望央(わたなべみお)さん(15)は授業後、「もしかしたら将来投資をするのかなあと感じたが、現実感は薄い。授業の理解度は3割ぐらいです」と話した。
「今役立つ実感はないでしょう。将来、興味を持つきっかけになればいい」と森下教諭は言う。自身の体験談も織り交ぜ、記憶に残る授業を心がけている。
文部科学省によると、家庭科の新学習指導要領は、少子高齢化や社会の不透明さを背景に、生涯を通じた生活設計を具体的に意識させるのが狙い。金融教育を拡充させる形で、老後を見据えた資金準備の必要性や資産形成の視点を取り上げ、保険や株式、投資信託など金融商品の特徴にも触れるよう規定している。
より良い授業を模索する中で、現場には戸惑いの声もある。茂木高の沼田美季(ぬまたみき)教諭(47)は「私自身、投資になじみがない。体験として語れないのがもどかしい」と悩ましげだ。教諭の金融商品への理解や経験によって、授業の質が左右されることも不安視し、「研修などで知識を積むほかない」と話した。
指導に難しさを感じる教諭の支援として、県教委は消費者教育に詳しい弁護士などの専門家を授業に派遣する仕組みを整えており、サポートしていく考えだ。