仕事や生活がバーチャルファーストに変化する?世界が注目する「次世代インターネット」とは

ゲームチェンジ(従来のルールや価値観が崩壊し、新たな枠組みに切り替わること)が起きていると言われるほど、次世代インターネットへの注目が高まっています。インターネットが向かう次のステップは、どういった世界なのでしょうか?

gumi創業者の國光 宏尚( @hkunimitsu )氏の著書『メタバースとWeb3』(エムディエヌコーポレーション)より、一部を抜粋・編集して「バーチャルファーストの世界」について解説します。


次世代インターネットが向かうゴール

たとえば、「ビットコイン」はインターネットファーストでありバーチャルファーストなネイティブカレンシーです。ここが重要なところで、これまでもフィンテックサービスはいろいろありましたが、これらは既存の金融の仕組みの上に乗っていたものです。クレジットカードや銀行の仕組みの上で展開され、私たちの生活をちょっと効率的にしていただけです。

図1 次世代インターネットが向かうゴール図

ところが、ビットコインはリアルと関係なくバーチャルだけで完結しているネイティブカレンシーなので既存の仕組みを必要としていません。

さらに「イーサリアム」は、DApps(ダップス:分散型アプリケーション)を構築できる、バーチャルファーストなコンピューティングネットワークです。

図2 國光流シンプル理解

さらに2021年世界中で爆発的に盛り上がったNFTは、バーチャルファーストなコンテンツフォーマットのことであり、DAOはバーチャルファーストな組織のかたちです。

「バーチャル上でみんなが参加することが可能で、そこには経済圏がある」。いまはゲームの印象が強いかもしれませんが、私たちの仕事や会議、生活など、今後すべてがバーチャルファーストに変化していきます。

メタバースの発展で重要なのはセンス・オブ・プレゼンス

メタバースには次の三つのロードマップがあります。

(1)世界中のゲーマーを取り込めるか
(2)タブレットやPC市場(職場や学校)を取り込めるか
(3)ポストスマホ(ARグラス分野)

まずはゲームで切り拓いていって、そこで経済圏を回しつつオフィス分野や教育分野に参入する、そして今後リリースされる予定の使用感の良いARグラスが普及し、その後一般の人にも浸透していく流れになります。

コロナ禍でリモートワークは定着しつつありますし、大学もオンライン授業が増えている、そこで見えた課題としてあるのが「コミュニケーション」です。今後作りたいものがバーチャルファーストの完全なるメタバースをゴールとすると、そこに登るために必要なのがメタバースとWeb3です。

メタバースで決定的に重要なのが「センス・オブ・プレゼンス」=実在感。いま、そこに「いる」感じです。

センス・オブ・プレゼンスがメタバースになぜ重要かを、Zoomを例に説明します。オンライン会議を通じて私たちが気づいたのは、何がZoomで十分で、何がリアルのほうがいいかということだと思います。ちょっとした打ち合わせだとZoomなどオンラインでいい。

でも、少し前に流行った「Zoom飲み」をいまやっている人はほとんどいませんよね?

やはり食事をしたりお酒を飲んだりするのにZoom越しって楽しくないよね、と気がついたからです。ここを解決することがバーチャルファーストでは重要になってきます。

Zoomだと、「そこにいる感じがしない」。この実在感を作るために重要なことは次の二つです。

(1)レゾリューション(解像度)
(2)レスポンス

レゾリューションはとてもシンプルで、2Dでも画質がよくなればよくなるほど、そこにいる感じがします。ゴールとして、「片目で4Kずつの解像度」が実現するとバーチャルとリアルの区別がつかなくなるといわれています。これはハードウェアのスペックが上がれば解決できる課題です。

二つ目に重要になるレスポンス、これはZoomで会話がかぶったり、お互いが無言になってしまう、というアレです。これはリアルなコミュニケーションではあまりないですよね?

なぜZoomだと起こるかというと、インターネットは意外と遅いため、リアルタイムで情報が入ってこない。そのため話しているバーバル(言葉を使う)な内容は理解できるけれども、うなずいたり、まばたきしたり、表情がリアルタイムで伝わってこないことに起因しています。

人の会話のかなりの部分はノンバーバル(言葉を使わない)のところにあるため、そこがうまく伝わらないから「いる感じ」になっていない。新しい「Oculus Quest(オキュラスクエスト)」など最新のVRヘッドセットでザッカーバーグがこだわっているところですが、かなり正確にまばたきだったりうなずきだったり、表情など表現できるようになりつつあります。ただ正確なトラッキングまでは行われておらず、一見そのように見せているだけですが近い将来登場するハードではトラッキングできるようになるといわれています。これがリアルタイムに表現できるので、本当に「そこにいる感じ」というのがでるのです。

なぜこれが重要かというと、バーチャルファーストの世界を作ろうとしたとき、その中で「仲良くなる」とか「好きになる」といった人間関係の構築が必要になってきます。それにはバーバルだけでなくノンバーバルなところで「この人が好き」とか「この人はいい人」と感じられることが重要になると思います。「ビビッときた!」という感覚もノンバーバルのところで起こりますよね。身振りや手振り、表情なども含めて判断する、だからリアルで一緒にお酒を飲む方がZoom飲みよりも楽しく感じる。

センス・オブ・プレゼンスは2Dだと限界がありますが、VRなどのメタバースが作ろうとしているのはまさに、「そこにいる感じ」で、これが実現することでバーチャルだけどリアルと変わらない人間関係が作れるようになってくるのです。

著者 國光宏尚

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世界が注目する次世代Webの基本から、押さえておきたいトピックスまで満載。

2022年のいま、世界のマーケットで既存のサービスにとってかわる「ゲームチェンジ」が起きています。このムーブメントに乗り遅れないために知っておかなければならないのが「メタバース」と「Web3」です。驚異的な勢いでビジネス化が進むメタバース、話題のNFTや今後注目されるDAOにWeb3がどう絡んでいるのか? グローバル化、デジタル化という世界の変化に乗り遅れてきた日本企業、そして一個人がチャンスを掴める時代がいよいよやってきます。今後、世界で起きる大きな変化である「バーチャルファースト」への移行。本書ではいま知るべきことは何か、これから世界はどこに向かっていくのか、そして時代の波に乗るためのビジネスチャンスのヒントを、長年VRとブロックチェーンの領域でビジネスを手がけてきた著者が解説する、メタバースとWeb3の決定版。

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