吉田恵里香が第40回向田邦子賞贈賞式で喜びを語る! 受賞作「恋せぬふたり」岸井ゆきのらキャストが祝福

優れた脚本作家に贈られる向田邦子賞(向田邦子賞委員会・株式会社東京ニュース通信社主催)の第40回贈賞式が5月24日、東京・千代田区の帝国ホテルで行われた。 第40回の受賞者は4月5日に行われた選考会で、吉田恵里香氏に決定。受賞作は、NHK総合で2022年1月10日~3月21日に放送された、よるドラ「恋せぬふたり」で受賞を果たした。

贈賞式では、吉田氏が受賞の喜びを語り、池端俊策選考委員から選考経過の説明、大石静選考委員から賞状の授与が行われた。東京ニュース通信社・代表取締役社長の奥山卓からは、本賞の特製万年筆と副賞の300万円が贈られ、ドラマの制作統括を担当したNHKの尾崎裕和氏も、お祝いのスピーチを行った。さらに、ドラマに出演した濱正悟北香那が会場に駆けつけ、主演を務めた岸井ゆきのはビデオレターでさらなる活躍に期待を込めて受賞を称えた。

【吉田恵里香 受賞スピーチ】

向田先生はテレビドラマも小説も随筆も幅広く執筆されていてずっと憧れていて、向田先生みたいになりたいなと思いながら日々執筆をしてまいりましたので、向田先生の名前がついた賞をいただけて本当に光栄です。選考委員の皆さん、主催者の皆さん、あらためまして本当にありがとうございます。

「恋せぬふたり」に限った話ではないですが、映像作品はもちろん脚本家1人で作るものではないと思います。それは演者さん、ディレクターさん、プロデューサーさん、小道具さん、照明さんなどの多くのスタッフの皆さんはもちろんなんですが、私の場合は特に家族の支えなしでは書くことができませんでした。いつも土日にもかかわらず打ち合せや執筆をしている中、支えてくれた夫、両親、そして大好きな息子に本当に感謝しています。そして大学生の頃から私を支えてくださった事務所の皆さんにも本当に感謝しています。いつもご迷惑かけて申し訳ないです。本当にこの賞はスタッフさんなど関わった方、関わった方を支えている皆さんすべてで取った賞だと思っています。本当に重ね重ねありがとうございました。

この作品はアロマンティック・アセクシャルという性的指向、恋愛的指向をもった方が登場するドラマとなっています。このドラマを通じてアロマンティック・アセクシャルについて知った方や「自分がアロマンティック・アセクシャルだよ」とカミングアウトできたという方、さまざまな方がいらっしゃいました。このドラマを通じて少しでもアロマンティック・アセクシャルという方がいることを世間の方に認知していただけたということはすごくうれしく、テレビドラマってまだまだやるじゃんと思っております。

その一方で、そのようなアロマンティック・アセクシャルなどの性的マイノリティーの方をドラマの中で消耗品、ネタとして扱ってしまう危険性も、私は同時に感じております。ですので、私は今後も持続的に正しい知識でアロマンティック・アセクシャル方、性的マイノリティーの方にかかわらず、「生きづらさ」を感じている方に希望を与えられるような、「生きやすさ」を感じていただける、ちょっと肩や背中にぽんぽんと手を置けるような作品を目指していきたいなと思っておりますし、今のテレビドラマの中にもっとそういう作品が増えていけばいいなと思っております。私もベストを尽くします。頑張ります。皆さんもこれからも応援よろしくお願いします。ありがとうございました。

【よるドラ「恋せぬふたり」出演者 祝福コメント】

■濱正悟
「松岡一、一(かず)くん役を演じさせていただきました濱正悟と申します。吉田さん、ご受賞おめでとうございます。本日は『恋せぬふたり』が素晴らしい賞を受賞して、自分もお祝いの言葉を寄せさせていただく機会をいただけたこと、本当にうれしく思っております。この作品を通して、自分が何かを言ったり行動を起こしたりする前に人のことを少しでも考え、思う瞬間って大切だなというように、本当にいろいろなことを知ったり、考え、学ぶことがたくさんある作品でした。そして役を通して一くんと共に自分も少しは成長できたんじゃないかなと思っております。現場の皆さん全員の愛やこだわりのおかげで、一くんは一くんでいられたと思うのですべての皆さまに感謝申し上げます。また引き続き頑張ってもう一回り大きくなって、吉田さんの作品にまた関われるように頑張っていきたいと思っています。本日は本当におめでとうございます」

■北香那
「主人公・咲子の妹役みのりを演じました、北香那です。本日は吉田さん、本当に受賞おめでとうございます。この作品を通して、いろんな自分の中で概念というものが変わったように思います。一番思ったことが、どうしても初対面でお会いした方のことを『性』で区別をしてるところが無意識にあったなというようなことです。初対面でお会いした方を、そういった区切りで決めつけず、いかなる可能性もあるので、そういう決めつけが誰かを苦しめている可能性があるかもなということを特に深く考えたりもしました。自分が普段生活していた中で『普通こうであるよね』という言葉に違和感を持った時に「自分はこうだ』とはっきり言えなかった部分というのがあって、生活する中で苦しむ瞬間というのがあったんですが、この作品を通して、それこそ肩に手を置かれた感じで『自分は自分で大丈夫なんだ』と言われたような、そんな気がしました。この作品に役者として出演をできて本当にありがたいな、よかったなと思っております。皆さん本当にお世話になりました。ありがとうございました」

■岸井ゆきの
「吉田さん、向田邦子賞受賞おめでとうございます。今日は撮影で伺えませんでしたが、とてもうれしく思っています。『恋せぬふたり』の脚本は、自分の気持ちを吐露する場面などは長くセリフが多いシーンもあったのですが、覚えにくいということが一切なくて、思ったことを考えてから言葉にするというより、考えていることを今紡ぎながらしゃべっているというシーンが多く、咲子の気持ちはすごく理解できました。また私自身もその言葉について考えながらしゃべることができたので、私も咲子と成長することができました。ありがとうございました。これからも吉田さんと一緒に物語を作っていけたらいいなと思っています。今日は本当におめでとうございました」

また、受賞式には、昨年の受賞者である橋部敦子氏も登壇。昨年の自らの受賞を振り返りながら、吉田氏の受賞に「テレビドラマの常識をくつがえすような題材での受賞で、同業者としてもとてもうれしい」と賛辞を送った。

【プロフィール】

吉田恵里香(よしだ えりか
1987年11月21日生まれ。神奈川県出身。日本大学芸術学部卒業。2013年に「恋するイヴ」(日本テレビ)の脚本を手掛け、映画「ヒロイン失格」やテレビドラマ「花のち晴れ~花男 Next Season~」「Heaven?~ご苦楽レストラン~」(ともにTBS系)など、女性向けコミックの実写化作品の脚本に多く携わる。20年、連続ドラマ「30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい」(テレビ東京ほか。おかざきさとこ氏と共同脚本)で注目を浴びる。

<向田邦子賞とは>

故・向田邦子さんがテレビドラマの脚本家として、数々の作品を世に送り出し活躍してきた功績を称え、現在のテレビ界を支える優秀な脚本作家に贈られる賞として、1982年に制定。主催は「TVガイド」を発行する東京ニュース通信社で、選考は歴代受賞者らによる向田邦子委員会が担当。前年度に放送されたテレビドラマを対象に、選考委員がノミネート作品を選定。本選を含めて4回の討議を経て受賞作品を決定している。選考委員は池端俊策氏、大石静氏、岡田惠和氏、井上由美子氏、坂元裕二氏(向田邦子賞受賞順)。

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