街の人たち
「暑い。健康によくない。歩いているときにはいらない」
「外したくない」
「まだまだ心配、新型コロナが」
最近、議論が盛り上がってきたマスクを外すべきか、つけるべきか問題…。
「早く外したい」
「声がこもって聞きにくい。お互いコミュニケーションをとるときに不都合がある」
そう、マスクは、コミュニケーションの問題でもあるんです。きょうのテーマは、『マスクのデメリット』。5年・10年先?の心配事についてお伝えします。
もう2年以上も着用しているマスクですけれども、今、場面によっては積極的に外した方がいいのではないかという声が出ています。24日までに公表された厚生労働省や文科省の見解です。
厚労省
▽ 屋外で目安として2m以上の距離がとれる場合はマスク不要
▽ 2歳以上、就学前の子どもたちへのマスク着用も一律には求めない
文科省
▽ 体育の時間は屋外の運動場に限らず、プールや屋内の体育館なども含めてマスクの着用は必要ない
マスクをつけていると、夏は暑いし、熱中症も心配です。ただ、専門家たちが指摘する理由には、ほかに子どもたちの将来に関する心配があります。どういうことなのか、子どもの感覚の発達などが専門の医師に話を聞きました。
□ マスク問題 ≒ コミュニケーション問題
広島市西区のなかよし保育園です。保育士たちはマスク生活が始まって以降、「伝わりづらさ」を感じているといいます。
保育士 田中香菜子さん
「あやし遊びとかをするんですけど、『いないいないばあ』とか。マスクがないときは目と目がすぐ合って、心が通って、笑ってくれている感じがあったが、(マスク着用後は)ここだけの表情しかないから、全然わからなくて、不思議な目をされたり。(子どもが)表情を読み取るのがすごく難しいとは思う」
保育士 小西幸子さん
「(以前は)保育士が楽しんでいる様子をまるごと受け取っていて、それは表情全部から伝わっていたものがあるのかな。(対策として仲間と)もう120%、ここで表現すると(決めた)。こうやって笑って『楽しいね!』って」
この保育園では、さまざまな対策をとっていますが、この「伝わりにくさ」については子どもたちの将来を懸念する声があります。
県立広島病院 小児感覚器科 益田慎医師
「少し遠い先におそらく5年~10年先ですが、一気に学力が落ちるんじゃないかと今、懸念しています」
□ 「マスクのせいで学力が落ちる!?」
益田医師が特に懸念しているのは、大人のマスク着用が幼い子どもたちの言語能力に影響するのではないかという点です。
益田慎医師
「おそらく、みなさんが思っていらっしゃるのは、言葉=コミュニケーションです。ではなくて、われわれの発想は、コミュニケーションの中の言葉なんです。今、問題になっているのは、“コミュニケーションそのものがうまくできていない”。声は聞こえているから、言葉のやりとりはできているけれども、顔・表情、誰がどういうふうに一連の行動の中で何をしゃべったのかという、しゃべる前の段階 “非言語コミュニケーション” がきちんととれていないのではないかという懸念」
一般的に人は言葉だけでなく、表情や身振り・手振り、声のトーンなどを含めてコミュニケーションをとっています。益田医師によりますと、そういった非言語のやりとりがあってこそ、言葉をしっかりとつかむことができるんだそうです。
ところが、マスク着用により表情が見えづらくなるなど、やりとりは「言葉だけ」に頼りがち…。益田医師は、結果として子どもらが言葉を体得しにくい状況ができてしまっていると指摘します。
益田慎医師
「コミュニケーションがない中、言葉だけでやりとりをしているわけです」
― 言語だけ?
「ただ、それは中身がないんです。コミュニケーションがとれたところで、言葉でのやりとりをしないと、“使える言葉” にならない。言葉のやりとりだけで表面的に理解をすることと、中身を伴って理解をして、さらに使えるようになるのには差がある。そこが今、立ち遅れてるいるのではないか。われわれが考えるときは頭の中でしゃべっていますよね? 逆に言うと、しゃべれないと頭で考えられないんですよ」
一概に「言葉」といっても日常生活でやりとりするための言葉は「生活言語」と呼ばれます。そこから発達して、抽象的なことを説明したり、学校での勉強に使われる言葉は「学習言語」です。
「生活言語」がしっかりと中身のある、使えるものになっていないと「学習言語」の土台がないということになります。
県立広島病院 小児感覚器科 益田慎医師
「生活言語、表面上のやりとりがすんだら、できたとつい思っちゃうんですけど。基盤となる生活言語に中身がないまま育っていくある一世代ができていて、その子たちが小学校3・4年生になったときにこの子たちの学習言語がどうなるんだろうと。そこは今、わからない。すごく心配しています」
― 益田医師は、「いますぐマスクを外すべき」とは思っていなくて、むしろ、感染者が高止まりしている広島では、大人が室内で会話するときに外すわけにはいかないとも考えています。では、どうするのか?
__益田医師の提言
▽ ジェスチャー付きで伝える
▽ リズム体操・リトミック・手遊び歌に集団で取り組む機会を増やす
▽ 家庭ではマスクなしで意識して表情を見せて伝える__