険しい避難路「逃げれるべが」 男鹿市・戸賀、4人に3人高齢者

連載「津波リスクと高齢化」① 男鹿半島西部にある漁村・男鹿市戸賀地区。今月17日、湾に沿って並ぶ民家の一角で1人暮らしをする江畑栄子さん(83)は、近所の住民と一緒に集落裏手の高台を目指して歩いた。

 シルバーカーを押しながら一歩一歩。自宅から約180メートル先の公園を目指す。日本海中部地震が発生した39年前、津波から身を守るために逃げ込んだ場所だ。

 記者も同行し、住宅の間を流れる川沿いの狭い道を進んだ。緩やかな上り坂が続き、目的地に着くまで7~8分ほどかかった。「足腰痛くて、ちょっとした距離を移動するにも大変。急ぐなんてできない」とため息が漏れる。

 津波に備え、男鹿市が指定した緊急避難場所は、さらに標高10メートルほど斜面を上った場所にある。自宅のすぐ裏手の高台までの坂道でも、足腰の弱った高齢者にとっては険しい避難経路だ。

 1983年5月26日正午ごろ。江畑さんは自宅にいた。江畑さんは自宅にいた。大きな揺れの後、近所の人が「津波来るから逃げろー」と声を張り上げるのが聞こえた。足の悪い母親の肩を担ぎ、親類と一緒に公園に向かって必死で逃げた。

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