平壌で出回り始めたコロナ対策薬、中身は単なる風邪薬

北朝鮮の国歌非常防疫司令部の発表によると、20日18時からの24時間で全国的に18万6090人の発熱患者が新たに発生した。また、4月末から21日18時までの累計では264万6730人に達した。全員が新型コロナウイルスに感染したと断定できないものの、国民の10人に1人以上が発熱しているという異常事態となっていることには間違いない。

北朝鮮国内からは、医薬品の高騰や品薄、そもそも入手できない事情などが伝わってきているが、金正恩総書記が関連部署の幹部を厳しく叱責したおかげか、平壌市内では薬が出回りつつあるようだ。そんな中、デイリーNKは、実際に平壌で売られている、中国製の薬のパッケージの画像を入手した。

薬の名前は連花清瘟膠囊。中国で風邪薬としてよく使われるレンギョウ、スイカズラなどが配合された漢方薬で、コロナに効くのではないとの噂から多くの人が買い求めた。ただし専門家は、コロナによる発熱に一定の効果はあるものの、あくまでも風邪薬だとして、乱用を諌めている。

平壌の薬局では、これが1万5000北朝鮮ウォン(約300円)で売られている。中国では20元(約380円)ほどで売られているので、法外な価格ではないものの、北朝鮮の人にとってはかなりの高級品だ。

現地の情報筋によると、今月15日まで薬局には基本的な薬すらなかったが、16日からは解熱剤、風邪薬、止瀉薬などが少量ながら入荷したとのことだ。購入時には、平壌市民証の提示が求められ、誰にどのような症状があって購入したかを記録している。また、買い占めや転売を防ぐため、2箱以上の購入はできないことになっている。

当局は、薬局で購入するよりも、人民班(町内会)奉仕隊を通じて、必要な薬をまとめて注文し、共同購入するように進めている。薬局に人が集まることを避けたいようだ。

同じ薬は、朝鮮人民軍(北朝鮮軍)の軍医局にも供給されている。ただし、情報筋によると、製造日と使用期限の明記されていないものが多く含まれているという。いずれの薬も調達ルートは不明だが、中国で使用期限が切れたものを安価で大量購入している可能性も考えられる。

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