ICT活用で養殖作業効率化 五島ヤマフとKDDI 人手不足解消へ

いけすの様子を映し出すパソコン画面。スマートフォンでも給餌時間などが設定できる=五島市、富江地域福祉センター

 長崎県五島市でヒラメなどの陸上養殖を手がける五島ヤマフと通信大手KDDI、同市は、情報通信技術(ICT)を活用し、遠隔での水質管理や自動給餌などの省力化や生産効率の向上を目的とした実証事業に取り組んでいる。25日、報道機関向けの説明会があった。
 五島ヤマフはヒラメやクエなどの陸上養殖事業を展開。ただ、従業員の安定的な確保やノウハウの蓄積に課題を抱えていた。KDDIは2019年、同市と地域活性化に関する協定を結んでおり、五島ヤマフの課題解決へ乗り出した。

いけすに設置された水中カメラで撮影されているヒラメ=五島市(KDDI提供)

 両社は1月から実証事業を開始。ヒラメの稚魚約3700匹が入るいけす(長さ20メートル、幅3メートル)に、水中と水上で動画撮影するカメラや、水温と酸素濃度を測る水質センサー、自動給餌器を設置。遠隔管理できる仕組みを整えた。
 従業員が1日10分3回ほど実施していた給餌作業がなくなり、1カ月当たり約8時間の作業時間を削減。人が入らないため、より衛生的な環境づくりにつながった。安定した水温管理やこまめな給餌が可能になったため、通常の1年より2カ月早いペースで出荷サイズの体長30~40センチまで育つ見込み。生残率も向上。今後、出荷数の拡大も見据える。

養殖場のいけすに設置された自動給餌器=五島市富江町

 富江地域福祉センターであった説明会では、約1キロ離れた養殖場の自動給餌をパソコン画面に映しながら紹介。パソコンとスマートフォンで餌の量や給餌時間を設定できる仕組みを説明した。養殖場ではあらかじめ設定した時間に自動給餌器から飼料が出る様子を公開した。
 久保聖徳養殖場長は「健康状態が離れた場所から確認できる。生育が良好で競争力が高まる」、KDDI地方創生支援室は「離島が抱える人手確保の課題解決や、勘と経験に頼らない養殖の実現に向け、取り組みを進めたい」としている。


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