<北朝鮮内部>職場と市場は平常 外出時は二重マスク 発熱したら隔離し一帯封鎖指示 「コロナより暮らしの混乱が恐怖」

マスクを付けて有刺鉄線の内側で国境警備に当たる若い兵士たち。痩せている。2021年7月に新義州市を中国側から撮影。
マスクを付けて有刺鉄線の内側で国境警備に当たる若い兵士たち。痩せている。2021年7月に新義州市を中国側から撮影。

◆咸北道の労働党員に内情を聞く

北朝鮮当局が新型コロナウイルスの発生を認めた翌13日、アジアプレスでは、北部の咸鏡北道(ハムギョンプクド)に住む取材協力者から話を聞くことができた。そのうちの一人のインタビューを掲載する。住民の間では、コロナよりも封鎖や隔離による混乱を心配する声が多いようである。(カン・ジウォン/石丸次郎)

内部情報を伝えてきたA氏は中堅企業に勤める労働党員。金正恩氏が司会した12日の労働党中央委員会拡大会議で、「国家防疫事業を最大非常防疫システムに移行する」ことが決定されたが、地方都市でどのような措置が取られているかについて聞いた。

◆外出は禁止されていない

――金正恩氏は全国の全ての道、市、郡の封鎖を命じたというが、都市封鎖されているのか?
A 道、市、郡、里の境界にある防疫検問所に追加人員を派遣して移動を統制している。

――都市封鎖して外出もできないのか?
A 外出が禁じられたわけではない。ただし、マスクを二重に着用するように命じられている。工場や、職場には普段通り出勤させている。業務に支障が出ないようにせよということだ。出退勤時に必ず体温検査をする。

――市場は運営しているのか?
A 市場は運営している。マスクを外したり、会話したりしてはならないと指示されている。

――家からの外出は自由か?
A すべてのアパートの入り口に詰め所を置いて、無条件で体温検査をしている。熱があるなど疑わしい症状の人は隔離し、一帯を封鎖するそうで恐ろしい。居住していない人のアパート立ち入りは禁止だ。病気を隠したり、検査を拒否したりする者は処罰すると通告があった。

◆農村動員は中断

――生活必需品の不足や物価高騰が心配だ。
A 皆、物価が上がると予想しているが、当局は商人らが値上げしないよう価格を監視している。一方の商売人は、価格が上がることを見越していて、市場に品物を出さないようにしている。

――始まったばかりの農村動員はどうなるのか?
A 農村動員はすべて中断になった。
※北朝鮮では毎年春と秋に都市住民を協同農場に勤労動員して田植えや草取りに従事させる。

――人々はコロナ拡大をさぞ心配しているだろう。
A コロナに罹っても死ぬ人は死ぬし、生きる人生きる。もっと恐ろしいのは病気より封鎖と統制だ。どうやって暮らすのか心配だ。

※アジアプレスでは中国の携帯電話を北朝鮮に搬入して連絡を取り合っている。

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