<北朝鮮内部インタビュー>「隔離されて死んでも誰もわからないだろう」 医薬品と食糧不足深刻 隔離者に国の支給なし

マスクを顎に下げて国境警備する若い北朝鮮兵。2020年10月に中国側から撮影アジアプレス

新型コロナウイルスの拡散が続いている北朝鮮で、地方都市で行動制限や統制が厳しくなりっていることが分かった。北部の咸鏡北道(ハムギョンプクド)のC市に住む取材協力者A氏がから、5月17日に連絡があった。A氏からは13日に続いて二度目の報告だが、C市では医薬品や食糧の不足が深刻であることを伝えてきた。A氏は中堅企業に勤める労働党員である。(カン・ジウォン/石丸次郎)

◆コロナで列車運行停止か

――C市の状況に変化ありますか?

A 統制がとても厳しくなった。(近隣の)農村に動員作業に行くのと、職場への出勤は続けているがマスクが必須だ。マスクを外したり、症状があるのに出歩いたりすると戦時法で処理すると言っている。

市内の通りには、路地まで「糾察隊」が見張りに立って、いちいち、どこへ行くのか聞かれる。市内の人通りは少ない。夜間は完全に通行禁止だ。ほとんど都市封鎖だ。
※糾察隊とは社会秩序維持のために民間人で編成された取り締まり組織。通常は街頭で服装や金日成バッジの着用などを検査する。

――他の地域も同様なのか?

A 他の地域のことはよく分からない。電話もなかなか繋がらないし、列車の運行も中断された。他の道への移動は最初からできないし、隣の市、郡への移動もできなくなっていている。
※列車の運行停止が全国規模なのかは不明である。

◆薬局に薬がない 市場は閉鎖

――医療体制はどうか?

A 食糧も医薬品も国からは住民への支給はない。薬局にも薬がない。風邪薬や国産アスピリンすらない。金のある連中が買い占めて高値で売ろうとしているのだろう。

――市場はまだ開いているのか?

A 市場は15日から閉鎖された。(食べ物は)近隣の人から売ってもらっているが限度がある。

――それでは政府は住民たちにどう対処せよというのか?

A 15日に、人民班を通じて非常食と非常薬をあらかじめ買っておくように通達があった。それだけだ。

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――隔離はどうなっているのか?

A 熱が出ても行く場所がない。(当局は)施設に隔離すると言っていたが、その方がむしろ条件が悪いので自宅で隔離させている。
※施設で隔離しても与える食料がないとの意。

――身近に隔離された人はいるか?

A 16日に、近隣で男の子が発熱したため両親と一緒に家で隔離された。当局は食べ物を与えず接触もできないようにしているので、そのまま死んでも誰も分からないだろう。

コロナは罹っても大丈夫だと言う人もいるが、住民たちは栄養状態が悪いので、罹って意識を失う人もいるそうだ。そもそも、何がコロナなのかわからない。熱が出たらすべてコロナだとして隔離している。

――金正恩氏が自分の常備薬を寄付したと報じられた

A この厳しい時期だからこそ、国を助ける気風を作れと宣伝している。中央では、党の幹部からすすんで金と薬品を出せと言っている。C市でも、党委員会に金を捧げる人、人民班に米を寄付した人がいる。

※アジアプレスでは中国の携帯電話を北朝鮮に搬入して連絡を取り合っている。

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