お気に入りを見つけよう!NYで楽しむクラフトビールライフ

暖かくなりビールがおいしい季節になってきたNY。 この街に数え切れないほどのブルワリーがあることをご存じの人も多いだろう。今号では、バーテンダーライセンスを持ち、自家醸造するほどビールを愛するYoshiさんにクラフトビールについて話を聞いた。


クラフトビールを解説!

昨今のトレンドは?

ニューヨークで今、はやりのビールといえば「サワーエール」になると思います。サワーエールとはその名の通り酸っぱいビールのことで、ビール酵母でアルコール発酵して造られる従来のビールとは異なり、乳酸菌などを使って造られているのが特徴です。最近はどこのブルワリーでも目にしますよ。サワーエールにフルーツを加えたフルーツサワーエールやシロップを入れたものなんかもあり、酸味があってさっぱりとしているので、これからの季節にぴったりです。苦味が抑えられているものが多く、ビールが苦手という人にも楽しめると思います。

フルーツジュースのようにカラフルな「サワーエール」(手前はスタウト)

また「IPA」も、ここ数年不動の人気を誇っていますね。「India Pale Ale」の略で、ホップを大量に使用して造られるビールのことをいいます。大航海時代に、イギリスから当時植民地だったインドにビールを運ぶため、防腐剤の代わりに大量のホップを入れたのが起源とされています。

本来のIPAは苦味が強くてアルコール度数が高く、芳醇な香りがするのが特徴ですが、ここ最近は「ニューイングランドIPA」や「ヘイジーIPA」など、マンゴーやパイナップルなどを使ってフルーティーに仕上げたものや、苦味を抑えたものがトレンドになっています。

「IPA」は、防腐剤の代わりに殺菌効果のあるホップを大量に入れたのが始まり

お気に入りのビールを
見つけるには?

まずは自分の好みを知ってください。飲んでおいしいと感じたビールの銘柄はチェックしておきましょう。好みの傾向がわかってきたら、ブルワリーやレストランで店員におすすめを聞くのがいいと思います。具体的な銘柄を伝えて、それに近いものを選んでもらうと失敗も少ないでしょう。

ビールは大まかにラガーとエールに分けられます。ラガーは低温で造られる「下面発酵」のビールで、すっきりとキレの良いマイルドな味わいが特徴です。代表的なのはピルスナーで、世界中で飲まれているビールの7割を占めるといわれています。エールは高い温度で発酵する「上面発酵」という方法で造られます。芳醇な香りが特徴でアルコール度数が高く、フルーティーなものも多いです。IPAやペールエール、ホワイトエールやスタウトなどがこれにあたります。

おすすめの楽しみ方は?

これからの季節、暖かくなり冷たいビールをごくごく飲めるのがうれしいですよね。お気に入りのものばかりを飲むのも良いですが、ビールには季節ごとに変化をつけて選ぶ楽しさがあると思っています。夏はさっぱりとキレのあるラガーやサワーエール、冬にはもったりとした重めの黒ビールやIPAがおすすめです。ワインのように食べ合わせを考えながら選ぶのも楽しいですし、単体で楽しめるのもビールの魅力だと思います。

次頁からは、おすすめのブルワリーやタップビールが楽しめるお店、ビールのスタイルなどについて、引き続きYoshiさんに詳しく解説してもらう。

お話を聞いた人

増田吉則(Yoshi)さん

ビールノムリエ、俳優、モデル。1997年に来米し、HB Studioを卒業。SAG(映画俳優組合)に所属し、NYを拠点に役者として活動する傍ら、バーテンダーライセンスを取得。現在、Youtubeでビール紹介動画を発信中。ビールを自家醸造し、6月に開催されるNational Homebrew Competitionに自作ビールを提出予定。
Instagram: @ysnrmsd
Youtube: youtube.com/c/YoshiBeerNommelier

飲み比べてお気に入りを見つけよう!

クラフトビールが楽しめるお店を紹介

★一度にいろいろ試せる★ ブルワリーに行ってみよう

ブルックリン区イーストウィリアムズバーグにある、ジョー&ローレン・グリム夫妻によってオープンされたブルワリー。10年間の自家醸造の末、2013年からノマドブルワリーとしてビールを提供し始め、18年に現在の場所にブルワリーをオープンした。

アーティストでありミュージシャンでもある二人が手掛けるビアボトルや缶、ビールグラスは、デザインがおしゃれでかわいいものばかり。大きな窓から自然光のたっぷり入る明るくて広い店内で、さまざまなビールをフライトから楽しむことができる。何台も並ぶ、巨大なビール醸造タンクの手前で売られているオリジナルアパレルグッズも必見だ。

Grimm Artisanal Ales
990 Metropolitan Ave., Brooklyn, NY 11211
TEL: 718-564-9767/hello@grimmales.com
grimmales.com


2010年にイェッぺ・ヤーニット・ビャーウスさんにより、デンマークでスタートしたブルワリー。2018年にクイーンズ区リッジウッドのこちらの醸造所がオープンするまでは、設備を持たないノマドスタイルのブルワリーだった。世界中の有名ブルワリーとのコラボレーションによって生み出される数量限定のビールに定評がある。その他にも、季節限定の商品や通年購入できるものも多数そろえる。ここ最近のトレンドでもある、サワーエールやフルーティーなビールも豊富だ。

観葉植物で溢れた天井の高い店内は明るく、ビールが進む居心地の良さだが、テラス席の席数も多いのでこれからの季節にぴったりだろう。

Evil Twin Brewing
1616 George St., Ridgewood, NY 11385
info@eviltwin.dk
eviltwin.nyc


★タップビールを飲み比べ★ おすすめのビアバー

エセックスマーケットの地下、「マーケットライン」にあるクラフトビアバー。常時50種類以上のタップビールが飲めるのは、マンハッタンでも随一の品ぞろえだ。ローカルブルワリーによるクラフトビールから定番人気のクラシックなものまで、国内外から集めたさまざまなクラフトビールを飲むことができる。

小さいサイズのテイスティングラスもあり、遠方のブルワリーまでわざわざ足を運ばずして、幅広い種類のビールを少しずつ試すことができる。

店員さんに好みを伝えるとおすすめを詳しく紹介してくれるので、ためらわずに声を掛けていろいろ試してみよう。

The Grand Delancey
115 Delancey St./TEL: 302-751-0002
manager@thergranddelancey.com
thegranddelancey.com


常時約25種類ほどのタップビールをそろえる、地元の人々に愛されるクラフトビアバー。ローカルビールをはじめ、主にアメリカ国内のクラフトビールを提供している。ビールボトルや缶の販売のほか、おつまみやチョコレート、オリジナルキャンドルなどとビールを詰め合わせたおしゃれなギフトボックスも人気だという。

地元に根付いたアットホームな雰囲気のカフェでもあり、曜日を問わず朝はコーヒーを飲む人、昼以降はビールを飲む人たちでにぎわう。子連れ・犬連れも大歓迎なのがうれしい。プライベートイベントのためにクラフトビールを提供するオリジナルのキッチンカーを予約することもできる。

THE GREATS OF CRAFT
983 1st Ave./TEL: 646-781-9600
info@greatsofcraft.com
greatsofcraft.com

好きなスタイルはどれ?

ビールの種類を解説

基本的な知識をつけて、失敗しないビール選びを!


“複雑な香りと深いコク、フルーティーな味” 上面発酵で造られる エール

IPA(インディア・ペール・エール)

濃厚なホップの香りに加え、柑橘系の爽やかな風味を楽しむことができる。アロマの苦味がしっかりと感じられる、飲みごたえのあるビール。写真は「グースIPA」。


ペールエール

ホップの華やかでフルーティーな香りが特徴的なビール。麦芽の香ばしさが感じられ、苦味とコクのバランスが良い。写真は、「シエラ・ネバダ・ペール・エール」。


ホワイトエール

小麦を使用した、ほんのりと甘みの感じられるビール。苦味は比較的マイルドで、なめらかな口当たりが特徴。白濁しているものが多い。写真は「ヒューガルデン」。


アンバーエール

アメリカンホップを使用した、程よい苦味とコクが感じられるビール。麦芽から引き出される、カラメル風味のほんのりとした甘みが特徴的。写真は「ファットタイヤ」。


スタウト

黒ビールの一種で、「頑丈」や「強い」といった意味の通り、独特の苦味や香りが特徴。香ばしいナッツやチョコレート、コーヒーのような香りがする。写真は「ギネス」。


ポーター

焙煎した麦芽由来の、コーヒーやココアを連想させる黒ビール。グラスの向こう側が見えないほど濃い色合いと、ローストの香りが特徴。写真は「アンカーポーター」。


“スッキリとキレの良いマイルドな味わい” 下面発酵で造られる ラガー

ピルスナー

日本の大手ビールメーカー各社が造る代表的なスタイル。世界中で飲まれているビールのうち、7割を占める。キレのある爽やかな喉越しとホップの苦味が特徴。写真は「ピルスナーウルケル」。


デュンケル

「Dunkel」はドイツ語で「暗い」を意味する。香ばしい麦芽の香りとほんのりとした甘みが特徴的なビール。濃いブラウン色をしているが、苦味はやや弱めである。写真は「ヴァルシュタイナー」。


シュバルツ

「Schwarz」はドイツ語で「黒」の意味。コーヒーやチョコレートの風味、ローストした麦芽の香ばしさが感じられる。見た目によらず、さっぱりとした飲み応え。写真は「ケストリッツァー」。


ナショナル・ホームブルー・コンペティションとは?

アメリカン・ホームブルワーズ・アソシエーションが開催する世界で最も大きな自家醸造ビールの大会。毎年、自家醸造だからこそ生まれるユニークなビールが発表される。

日本では製造免許なしにビールを作ることは禁止されているが、米国では1979年に解禁され、現在国内全土に110万人ものホームブルワーがいるという。6月25日(土)には表彰式が開催されるという同大会に、その日が誕生日というYoshiさんもそばのビールを提出予定だそう。Yoshiさんのそばビールは、居酒屋じゅらくにて試飲可能。在庫の有無はお店に直接問い合わせてみて。

ナショナル・ホームブリュー・コンペティションに自家醸造ビールを提出予定のYoshiさん

National Homebrew Competition
homebrewersassociation.org/national-homebrew-competition
Izakaya Juraku
TEL: 212-477-0100/izakayajuraku.com

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