朝鮮のオミクロン感染、安定推移の秘訣 社会主義システムと人民に寄り添うリーダーシップ

新型コロナウイルスの流入と感染拡大は、朝鮮でも「建国以来の大動乱」といわれたが、適切な対策が迅速に行われたことで、他国に比べてオミクロン変異ウイルスの感染状況が短期間で減少に転じ、安定した推移を見せている。

社会主義制度の優越性に基づき、防疫の当事者である人民に寄り添ったリーダーシップが発揮されている。

見失ってはならない政策の中心

 コロナ感染拡大のような非常時に求められるのは、人々を結束させ、状況管理の主導権を獲得するリーダーシップだ。防疫の当事者たちの足並みが揃わず、感染状況を後追いしながら対策を打つようになると、いつまで経っても非常事態は終わらない。

朝鮮労働党中央委員会政治局会議で発言する金正恩総書記(朝鮮中央通信=朝鮮通信)

オミクロン株の国内流入確認から4日後に召集された朝鮮労働党中央委員会政治局会議(12日)で危機克服のリーダーシップが発揮された。国家防疫事業を最大緊急防疫システムに移行することを決めた会議で、金正恩総書記は「緊急防疫政策において見失ってはならない中心」について改めて強調した。

「悪性ウイルスよりも危険な敵は非科学的な恐怖と信念不足、意志薄弱だ。我々には党と政府、人民の一致団結による強い組織力があり、長期化した非常防疫戦の過程で培われ、強固になった人々の高い政治意識と高度の自覚性があるので、今の突発事態を必ずや克服し、非常防疫事業で勝利を収めるだろう…」

総書記が指摘するように、朝鮮の防疫政策には哲学的基礎がある。他の政策と同様に、人がすべての主人であり人がすべてを決定するというチュチェ(主体)の原理が貫かれている。防疫は人民の命を守るための人民自身の事業という認識が社会的に定着しており、朝鮮式社会主義にはそのような政策の実行を担保する制度と秩序がある。

現在、稼動している最大緊急防御システムの目的は、△国内に流入した新型コロナウイルスの感染状況を安定的に抑制・管理し、△感染者を早期に治癒し、△最短期間で感染源を絶つことにある。そのために、すべての道・市・郡を封鎖し、事業・生産・居住の単位別に隔絶する措置を講じた。

このような厳しい防疫規律を守るのは、先進的な医療技術や設備ではない。この国の人々だ。

朝鮮国内すべての機関で最大非常防疫システムが稼動している。(労働新聞)

防疫事業を担当する政府機関とそうではない機関が区分される他国とは違い、朝鮮では労働党と中央および地方行政、経済・安全・保衛・国防をはじめとする国内すべての機関で最大非常防疫システムが稼動している。

しかし、防疫戦で発揮される強い組織力や統制力は、上意下達の命令と指示だけでは成り立たない。それは人々が体現した自覚的一致の結果である。

朝鮮が誇る「一心団結」には中心がある。コロナ禍の中でも、リーダーの活動に歩調を合わせることが重んじられ、人々の情緒的一体感が増している。

象徴的な出来事があった。金正恩総書記が人民と運命を共にする決意と一日も早くすべての家庭に平穏が再び訪れることを願う気持ちから自宅の常備薬を本部党委員会に託し、大変な思いをしている世帯に届けてほしいと述べたというエピソード、その薬を受け取った黄海南道住民の感謝の声が新聞、テレビで報じられた。

読者や視聴者は単なる物品の伝達として見ない。人々は「一つの大家族」のように皆が情を通わせながら生きる自国の風潮を思い浮かべ、全人民が一丸と難局を乗り越えようという気持ちになった。

他国が真似できない朝鮮特有の国風だ。

総書記が提供した医薬品が黄海南道に住民に伝達された(朝鮮中央通信=朝鮮通信)

 弊害を正すプロセスの可視化

 他国でも、国家指導者の言動とその政策に対する国民の信頼度が感染防止対策の成否を決定する要因となった。

朝鮮では、非常防疫戦の初期から最高指導者が参加する党の重要会議が連日のように招集された。会議では、感染状況の分析に基づき講じるべき措置を決定し、それを逐次、メディアを通じて人民に知らせた。

政策の執行過程で弊害や問題が生じたら、原因と責任所在を明確にし、それを解消するための対策を迅速に行った。

例えば、非常防疫戦の初期に国家備蓄の医薬品を緊急解除して普及する指示が出されたが、住民たちには当局が想定した通りに届かなかった。

党中央委政治局協議会(15日)では、政策の直接的な執行者である内閣と保健省を批判するだけでなく、「全国的に医薬品の流通・販売過程で露呈した否定的現象」を正すことができなかった司法と検察の責任者も厳しく叱責した。会議では、発熱者の発生率が全国的に最も高い平壌市の医薬品供給を安定させるために朝鮮人民軍の軍医部門を投入する特別命令を発した。

医薬品供給を安定させるために朝鮮人民軍の軍医部門が投入された(朝鮮中央通信=朝鮮通信)

「否定的現象」があっても、問題に真摯に取り組み、弊害と欠点を克服するプロセスを人々に可視化することで政策執行に対する信頼の基盤は拡充することができる。

その日、金正恩総書記は協議会を終えると平壌市内の薬局を訪れ、医薬品の供給実態を自ら確認した。

悪性ウイルスが広がる首都の夜道を歩く最高指導者の映像がメディアを通じて広まった。「党中央は人民死守の最前線にある」(19日付の労働新聞1面に掲載された政論)というイメージが社会的に定着し、皆が厳しい防疫規律を徹底的に順守することで、地域封鎖・単位別隔絶を解除する日を早めようという気運がつくられた。

金正恩総書記は平壌市内の薬局で医薬品の供給実態を自ら確認した(朝鮮中央通信=朝鮮通信)

 非常防疫戦は転禍為福の機会

 コロナ対策で先行した国々では、政府が試行錯誤を繰り返し、厳然たる失策を是正できずに硬直した対応を続けた結果、非常防疫措置が長期化するケースがあった。

朝鮮では防疫形勢の変化に伴い政策を機動的に調整している。感染状況が初期の急速な増加から減少に転じ、安定推移が続く局面でも、すべての現象を見極めながら長点と欠点を判別し、批判的・発展的見地から一連の対策を立てている。

金正恩総書記は、オミクロン変異ウイルスが国内に流入し、熱病が首都圏などで同時多発的に広がったことは我々が立てた既存の防疫システムにも抜け穴があることを示したと事態の深刻性を指摘した。

金正恩総書記は、防疫に限らず国家的事業における非効率性を是正しなければならないと指摘している(朝鮮中央通信=朝鮮通信)

そして非常防疫戦の陣頭指揮に当たってからは、露呈したシステムの欠点や脆弱な部分を補い、国家の防疫能力を一段と向上させなければならないと主張している。

さらには、防疫に限らず国家的事業における非効率性を是正し、危機対応能力の画期的発展を目指さなければならないとして、そのために戦略的観点から国家システムの整備補強を進めるとしている。

朝鮮では非常防疫戦を国家の力量を上げる転禍為福の機会と捉え、党と政府と人民が一丸となって感染抑制に努めている。

 

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