野菜不足の昼食と高脂質な夕食が高血圧と関連 早稲田大学とあすけんが共同研究

早稲田大学理工学術院・柴田重信教授の時間栄養学研究室とAI食事管理アプリ「あすけん」を開発・運営する株式会社askenは、共同研究において、食事のナトリウム、カリウム、脂質の摂取量と血圧との関連性について調査を実施。その結果、昼食の高カリウム・高食物繊維摂取が高血圧の抑制と、夕食の高脂質摂取が高血圧の促進と関連することが明らかになった。

心血管疾患は世界中の主要な死因の一つであり、引き起こす危険因子に高血圧がある。血圧はナトリウム、カリウム、コレステロールなどのさまざまな栄養素にも関連しているとされるが、これらの栄養素の摂取タイミングや血圧に焦点を当てた研究はこれまで行われてこなかった。

共同研究では、食と栄養素の摂取タイミングと体内時計の関係性を探究する「時間栄養学」の観点で、高血圧を予防する可能性を探った。食事管理アプリ「あすけん」から食事データを収集し、睡眠、身体活動、血圧に関するアンケートを実施。朝食、昼食、夕食の栄養素摂取量の食事データと血圧との関係を調査した。

調査では、「あすけん」のユーザー2402名(平均年齢46歳、BMI23.1、女性70%)を対象に、最高血圧、睡眠時間(朝型・夜型の評価)、身体活動、各食事(朝、昼、夕食)の炭水化物、たんぱく質、脂質、ナトリウム、カリウム、Na/K(ナトリウム・カリウム)比、食物繊維、飽和脂肪酸、コレステロールの摂取状況との関係を統計解析した。

その結果、①朝食のたんぱく質は血圧抑制に関係、②昼食では、カリウムが多く、Na/K比が小さく、食物繊維が多いことが血圧抑制に関係、③夕食の摂取エネルギー、脂質量、飽和脂肪酸、コレステロールはすべて血圧増加に関係、④高年齢、高BMI、低運動量(METs)や夜型であることが高血圧と相関することがわかった。以上の研究結果から、朝食ではたんぱく質を、昼食では野菜を多く摂り、夕食では脂質を控えることなどが、高血圧の予防につながることがうかがえた。

調査結果を受けて、柴田重信教授は「高血圧の予防なら塩分控えめで野菜に多いカリウム摂取、また動脈硬化予防のためには脂肪・コレステロール控えめなどは、知っている人は多いと思いますが、多くの人は『何時の摂取が関わってくるの?』ということにあまり関心はなかったようです。我々も驚いたことに見事なまでにそれぞれの摂取時間を気にする必要性が提示できました」とコメントした。

柴田教授によると、朝食では、血圧予防のみならず筋肉維持のために良質のたんぱく質を積極的にとり、昼食では単品でなく野菜豊富なサラダ・副菜などが入った定食を、乳脂肪たっぷりのデザートはランチ後に、夕食では、飽和脂肪酸が多い肉・乳製品系の油を避け、不飽和脂肪酸が多い植物油や魚系にすると動脈硬化を介する高血圧予防に効果的だという。

今後は因果関係を明らかにするために、昼食時に「カリウム塩」をとってもらうヒト介入試験や、詳細なメカニズム解明をマウスで行う予定。

論文情報:

【Frontiers In Nutrition】Association Between Na, K, and Lipid Intake in Each Meal and Blood Pressure

© 大学ジャーナルオンライン