次世代インターネット「Web3」とは何か?現在のインターネットの課題と「Web3」の特徴

次世代インターネット「Web3」がバズワードとして注目され、「Web3」関連のスタートアッ プが増加するなど、ムーブメントとなっています。

gumi創業者の國光 宏尚( @hkunimitsu )氏の著書『メタバースとWeb3』(エムディエヌコーポレーション)より、一部を抜粋・編集して次世代インターネット「Web3」について解説します。


そもそもWeb1、Web2とは何なのか?

國光流のシンプルな定義として、仮想通貨、暗号資産、ブロックチェーン、クリプト……、これらをリブランディングしたのがWeb3です。

2021年はアメリカを中心としてWeb3関連のスタートアップへの投資が目立ち、日本でもWeb3を視野に入れた企業やサービスが誕生しはじめています。

なぜ今、Web3がこれほど話題になっているのか――。

シリコンバレーを含めてホットになってきているのは、“power to the people(人々に力を)”ともいうべき、インターネットを人々のもとに取り戻そうというムーブメントが強まっていることが発端にあるのですが、何から取り戻そうとしているのか、解説のためにこれまでのウェブの流行の歴史を振り返ってみましょう。

まず「Web1(1.0)」とは、インターネットが普及しはじめた初期段階を指すのが一般的で、情報の発信者と受け取り手がはっきりと分かれていた時代のことをいいます。つまり、ユーザーは情報をただ受け取るだけで、ニュースサイトを見たり、ホームページを見たり、“Read の時代”でした。Web1(1.0)は、HTMLを利用したテキストサイトが主体で、画像・動画コンテンツは少なく、コミュニケーションの手段はメールが中心でした。

その次に来たのが「Web2(2.0)」です。

2005年ごろから語られることが急激に増えた新しいインターネットの形で、UGCが一般化した時代です。ブログに加え、みなさんが日常で使っているSNS、動画共有サービスなどの普及により、Readだけの時代から“Read+Writeの時代”になりました。

Web2(2.0)のわかりやすい特徴は、TwitterやYouTube、Facebook、InstagramなどSNSの普及です。誰もが気軽に発信者になることができ、画像や動画コンテンツのシェアも容易になりました。

一方でWeb2(2.0)の発展で大きな課題が生まれてきたのです。GAFAMなどに象徴される巨大IT企業がプラットフォームとして君臨し、SNSの投稿もUGCも、個人情報までもが集約され得る状態になったことです。つまり、データの所有権が自分自身にはない状態になってしまったのです。

データの寡占、プライバシーの独占的利用が起きやすい状態といえます。

大統領のSNSアカウントですら、プラットフォーマーによって一方的に停止されてしまう。アイデンティティーの一つともいえるSNSのアカウントやデータも、もはや利用者が所有しているわけではありません。もちろん、プラットフォーマーの存在によって秩序や安全性が保たれる面もありますが、自身のアイデンティティーがプラットフォームの一存で消滅する可能性があるという点は、このWeb2(2.0)時代の最大の問題といえます。

これに対してWeb3では、所有する権利がユーザーに戻り、自分のデータは自身のものとして持てるようにする動きが加速しているのです。

ブロックチェーンの流れを振り返ると見えてくること

ブロックチェーンの過去の変遷を振り返ると、いまのブロックチェーンは「第4世代」にあたります。

第1世代というのは、ビットコインとその“コピペ”です。第2世代はイーサリアムとその“コピペ”。第3世代はイーサリアム上で動くアプリケーションたち。そして第4世代が、イーサリアムのガチライバルたちです。

第1世代は、「通貨」としての暗号資産・ブロックチェーンです。2007年に誕生したビットコインなどがその代表となります。ビットコインの本質は「インターネットが初めて持ったネイティブ通貨」だということです。これまでもフィンテックサービスはたくさんありましたが、それらは結局すべて既存のシステムの上に乗っかっているだけでした。

既存のクレカ、SWIFT、銀行のネットワークの上で、少し効率的にしているだけの話でした。

でも、ビットコインは何の既存の仕組みの上にも乗っていない全く新しい「通貨」でした。

ただ、ビットコインもオープンソースのプロダクトであるため、ソースコードもオープンであり、コピペすればすぐに作れます。だから、ビットコインのコピペのようなものがたくさん出てきたのですが、結局、第1世代の戦いはビットコインの圧勝で終わりました。

第2世代では、2013年に当時19歳だったヴィタリック・ブテリンの「あらゆる目的のために使えるブロックチェーンのプラットフォームを創りだす」というビジョンに共感した人たちが集まってイーサリアムが誕生しました。このときもライバルはたくさん出てきたのですが、イーサリアムの圧勝で終わっています。

第3世代では、イーサリアムというプラットフォームができたために、その上で動くアプリケーションがいろいろと出てきました。その初期に流行したのが、資金調達としてのICO(新規通貨公開)です。その後、DeFi(分散型金融)やCeFi(中央集権型金融)という概念が生まれ、NFT、GameFi(ブロックチェーンを活用したゲームと金融の融合)、DAO(自律分散型組織)へとつながっていきました。

そして第4世代に入り、第3世代の中で見えてきたイーサリアムの限界(電力消費が大きい、トランザクションが遅いなど)も含め、それらの問題を解決しようとする動きが出てきています。

新規事業のキーとなる、ブロックチェーン事業戦略のヒント

私は、これまで多くの新規事業を立ち上げたり、投資をしたりしてきました。

モバイルゲーム、モバイル動画、VR/AR、ブロックチェーン。新しい事業をつくる際には、私なりの必勝法というものがあります。

まず3年から5年後に来る市場はどこかというのを見定めて、次に市場が立ち上がってきたらそこで成功する会社はこういう会社だという仮説を立てて、最後にファンドを設立してさまざまな会社に投資をしながら、投資先間で情報共有を徹底して、仮説検証を高速に回していくという戦略です。

gumiが上場したのは2014年ですが、そのとき、次の新しい事業の軸を作っていこうと考え準備したのがモバイル動画でした。

当時、いまから3年から5年後にモバイル動画が来ると考え、そのときに勝つ会社というのは、スマホファースト、つまりスマホ「ならでは」の動画コンテンツ、体験、UI/UXを一から作ったところと仮定して、gumi venturesという20億円規模のファンドを通じて投資をしました。ここからは動画レシピアプリ「クラシル」など多くの成功したスタートアップが生まれました。

ブロックチェーンの話にも繋がるのですが、私が信じているのは、新しいテクノロジーが出て来ると、そのテクノロジーじゃなければできないコンテンツ、体験、UI/UXというのを一から構築したところが成功するのだろうということです。

スマホゲームのときも、多くの企業は最初、家庭用ゲームやガラケーのゲームをスマホに移植しようとしましたが、そういったものは成功せず、結局ヒットしたのはスマホの機能を最大限に活用したパズドラや「モンスターストライク」のような、スマホでなければできないゲームでした。

私はブロックチェーンでもまったく同じことが起こると考えていて、重要になってくるのはブロックチェーンファーストで、ブロックチェーンならではのコンテンツ、体験、UI/UXを一から発明したところが成功していくと思っています。

でも、いま改めてプロジェクトを見渡すと、ブロックチェーンでなくてもできるプロジェクトが多く見受けられます。

ブロックチェーンの革新はトラストレスにある

Web3の未来がどうなっていくのか。それを考える上で重要なのがブロックチェーンにしかできない、ブロックチェーンならではの特徴を考えることです。

私は大きく次の三つの特徴があると考えています。

(1)トラストレス×自律的×非中央集権
(2)NFT
(3)DAO

ここからは、この三つの特徴に沿って解説していきます。

まず、はじめに重要になるキーワードが、(1)の「トラストレス」です。

その言葉の通り、トラスト(信用)を担保する主体がいないということです。暗号資産が大きな盛り上がりを見せた数年前からしきりに挙げられるキーワードですが、これがまさにWeb3、分散型インターネットを構築する重要な概念といえます。

ビットコインを例に解説すると、そもそも法定通貨の場合、政府や中央銀行が信用を保証しています。また、ポイントの場合、発行している企業が信用を保証しています。それに対して、ビットコインやイーサリアムなどは、信用を担保している中央集権的な主体がありません。単一のサーバーやデータベースに依存せず、多数の参加者がネットワーク上の取引を検証、承認する仕組みで、一人ひとりが参加するネットワークがサービスの基盤となっているのです。

日本円の場合、日銀や日本の政府が通貨の信用を保証しています。

同じように楽天ポイントは楽天、ヤフーのポイントはヤフーが信用を保証しています。これに対して、ビットコインは信用を保証する主体がいません。

これがトラストレスです。ビットコインの信用保証は、多くのマイナーがマイニングをする形で行っているのですが彼らは誰から指示を受けるわけでもなく自分の利益のために、自律的に動いている。楽天、ヤフーは、完全に中央集権ですが、ビットコインは非中央集権で動いている。トラスレスで自律的に動く非中央集権的なネットワークというのが、ブロックチェーンでないとできないことの本質の一つではないかと思っています。

もし、本当にブロックチェーンというテクノロジーが世の中を変えていくのであれば、この本質はすさまじく重要です。

たとえば私の会社が投資しているTHETA(シータ)という動画配信のP2P(ピア・ツー・ピア)ネットワークを提供する会社では、ネットワークに参加すると報酬としてトークンが得られるようになっています。

THETAは、VR版の動画投稿やeスポーツ配信プラットフォームを、クラウドサービスをベースに実現しているのですが、将来、4K/8Kといったように動画の解像度が上がり、さらにフルVRになったら、いまの100倍もの通信容量が必要になります。

対策として考えたのが一般ユーザーのパソコンやスマートフォンの空いている通信帯域を共有して大量のデータをやりとりするP2Pネットワークですが、誰も無償では他人にネットワークを貸したがらないものです。

そこでTHETAでは、ネットワークに参加するとビットコインのマイニングと同じように、トークンがもらえるというインセンティブを付けることで自律性を確保しています。多くの人たちのパソコンやスマートフォンの通信回線にはたいてい余裕があるのでパソコンやスマートフォンを立ち上げたままにしておくだけでトークンが入手できる仕組みです。

興味深いのはP2Pというテクノロジー自体は、枯れた技術で昔からありました。ただし、これまで成立してこなかったのは、人はみな自分勝手なもので、自分は利用したいけれど、他人には協力しないので、ピアが成立しなかったのです。THETAではユーザーは善意で協力するのではなく、自分の利益のために行動することでピアを成立させています。これはビットコインのマイニングでも同じです。性善説ではなく、性悪説に基づき、人は利己的に行動する、そのことで自律的にネットワークが成立する。実に人間の本質を捉えています。こうした仕組みを考えだしたサトシ・ナカモトはすごいと思います。

THETAのウェブサイト上でYouTubeのファウンダーであるスティーブ・チェン氏は「THETAは、YouTubeプラットフォームが2005年に従来のビデオをdisrupt(破壊的進化)させたのと同じように、今日のオンラインビデオ業界をdisruptさせるように動いています。YouTubeの最大の課題の一つは、世界中のさまざまな場所にビデオを配信するためのコストが高いことです」と興味深い発言をしています。

もう一つ紹介したいのが、中央管理者を必要としない、分散型取引所(DEX)のUniswap(ユニスワップ)です。従来の仮想通貨取引所とは異なり、中央集権的な主体が存在がおらず、ユーザーはプロトコルにより自動化された取引所内でユーザー自身がトークンの取引を行うことができます。

DEXは、Uniswap以外にもいくつか存在していますが、Uniswapはその中でも特に分散的であり、その高い流動性から人気を誇っています。

ブロックチェーンは、誰もが使えて誰も支配しないパブリックな台帳を歴史上初めて実現しました。しかし、実際は多くの中央集権的な交換所がハッシュパワーとプライベートキーを支配しているのが現状です。中央集権的な交換所は法定通貨と暗号通貨を交換するのには不可欠なのですが、その存在は当初のビットコインの哲学とは反しています。そのなかで私が注目しているのがUniswapなのです。

著者 國光宏尚

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2022年のいま、世界のマーケットで既存のサービスにとってかわる「ゲームチェンジ」が起きています。このムーブメントに乗り遅れないために知っておかなければならないのが「メタバース」と「Web3」です。驚異的な勢いでビジネス化が進むメタバース、話題のNFTや今後注目されるDAOにWeb3がどう絡んでいるのか? グローバル化、デジタル化という世界の変化に乗り遅れてきた日本企業、そして一個人がチャンスを掴める時代がいよいよやってきます。今後、世界で起きる大きな変化である「バーチャルファースト」への移行。本書ではいま知るべきことは何か、これから世界はどこに向かっていくのか、そして時代の波に乗るためのビジネスチャンスのヒントを、長年VRとブロックチェーンの領域でビジネスを手がけてきた著者が解説する、メタバースとWeb3の決定版。

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