タイヤに厳しい鈴鹿でGT300の勝てる条件。有力3チームに聞く【第3戦鈴鹿プレビュー】

 5月28〜29日、スーパーGT第3戦『たかのこのホテル SUZUKA GT 300km RACE』が鈴鹿サーキットで開催される。今季これまで2戦を終え、サクセスウエイト(SW)の搭載量にもバラツキが出るなか、SWの影響が大きいとされる鈴鹿での一戦を迎えることとなった。

 中高速コーナーが多い鈴鹿はタイヤに高荷重がかかる時間も長く、また路面の攻撃性も高いため、岡山国際サーキット、富士スピードウェイよりもタイヤに厳しいサーキットだ。それゆえに、タイヤメーカーによる“タイヤ戦争”もより激しさを増すことが予想されている。そこで、搬入日を迎えた鈴鹿にて、今大会で好走が予想されるGT300クラスの有力3チームのドライバーに、それぞれ話を聞いた。

■「決勝は正直、自信があります」ウラカン小暮

 開幕戦岡山をノーポイントで終えるも、2度の赤旗中断も挟んだ第2戦富士で5位フィニッシュを果たした88号車weibo Primez ランボルギーニ GT3(小暮卓史/元嶋佑弥)はSWが9kgと軽量。かつ、昨年の第3戦鈴鹿では、予選で4番グリッドを獲得すると、タイヤ無交換作戦を実施した5号車マッハ車検 GTNET MC86 マッハ号をコース上でオーバーテイクし、2位表彰台を獲得している。

 2位を獲得した昨年はSWが21kg。それ故に、9kgで迎える今大会にも期待が集まるが、期待しているのはドライバーも同じ。昨年オーバーテイクを見せた小暮卓史は「決勝は正直、自信があります」と語り出した。

「88号車としては、SWもそこまで重くなく、十分に優勝を狙える位置にいると思います。正直、ランボルギーニ・ウラカンGT3Evoというクルマが、鈴鹿にマッチしているかといえば、そうでない部分もあるかと思います。ただ、予選・決勝とひっくるめて今大会を考えると、ウエイトの軽さもあって“かなりいける”のではないかと感じています」

 小暮の自信の裏には、タイヤ選択を含めて、決勝に狙いを定めているという点もあるだろう。「予選は厳しい」としながらも、決勝では昨年の再現が見られるかもしれない。

「今年も傾向は変わらないと思いますので、粘り強くレースを戦いたいですね。本当は予選で前に出たいところですが……。決勝に狙いを定めている部分もあります。決勝は正直、自信があります」

 そんな小暮に気になる脅威となりそうなライバルを尋ねると「今季、予選ではダンロップタイヤ勢が速いですよね。気になるといえば、同じヨコハマ勢も含め、開幕2戦で本来のポテンシャルを出せず、SWが軽いままのチームもあるじゃないですか。そういったチームは、全部ライバルに見えます!」

2022スーパーGT第3戦鈴鹿 小暮卓史(weibo Primez ランボルギーニ GT3)

■ダンロップの予選上位独占は続くのか。「隣の芝はよく見えるから……」とK-tunes新田

 小暮の言葉の通り、2022年シーズンの開幕戦岡山の公式予選ではダンロップ勢がトップ3を独占。第2戦富士ではトップ4を独占し、前方2列をダンロップ勢が占めるかたちとなった。全7台のダンロップ勢の中でも鈴鹿との相性が良く、なおかつ、SWが8kgと少なめの96号車K-tunes RC F GT3(新田守男/高木真一)を今大会の本命に挙げる声をいくつも聞いた。

 その声は本人らの耳にも入っていたようだが、「隣の芝はよく見えるから……」と新田が呟いたように、新田、高木の両名の表情からは楽観さを感じることはなかった。

 今季K-tunes RC F GT3に加入した高木にとって、今大会は鈴鹿で迎える初の公式セッションとなる。しかし、第2戦富士を前にした4月に鈴鹿で行われたタイヤメーカーテストで周回を重ねている。ここ鈴鹿では、96号車は2020年第6戦で阪口晴南がポールポジションを獲得しており、クルマとして相性は実証済みと言える。さらに、今年はSWが8kgと軽いこともあり、あとはタイヤにかかっている状況とも言えそうだ。

「ぶっちゃけ、今年始めての鈴鹿戦なので、まわりの状況がまだわからないですが……。確かにいいタイムが出そうな雰囲気はあります。ですが、あくまでも僕がテストのなかで感じた範囲であって、路面温度がどんどん上がってくると、硬いタイヤなのか、柔らかいタイヤなのかというところで、予選を重視するのか、決勝を重視するのかが変わってきます」

「それで決勝重視にした上で予選Q1を突破できるのか、できないのかという作戦面も、すべては明日の気温次第になるのではないかと思いますね。柔らか目のタイヤでパフォーマンスが上がり、そのタイヤが少しでも保つのであれば、なるべく前の方からスタートしたいというのはあります」と高木は語った。

 一方、新田は「僕らの課題としていることが、今回も克服できないのでは、という不安も少しだけあります」と不安要素を口にする。

「今のタイヤと僕たちのクルマが少し合っていないところがあり、決勝中リヤタイヤがわずかに壊れてしまうことがありました。そうなるとレースペースが落ちるので、まずはそこを克服できていないとレースにならないのでは、という不安もあります」

 周囲の予想に反し、若干ネガティブな要素を抱きながら、週末を迎えることとなったと明かした96号車。予選重視なのか、決勝重視なのか。選択する作戦は明日の気温次第で変わることになりそうだ。

2022スーパーGT第3戦鈴鹿 K-tunes RC F GT3(新田守男/高木真一)

■「予選から前に出ないと厳しい」と埼玉トヨペット吉田

 52号車埼玉トヨペットGB GR Supra GTの吉田広樹にとって今大会は、新型コロナウイルス感染に伴う療養のため、第2戦富士欠場からの復帰戦ともなる。「最低でも表彰台に乗りたい」と語る吉田の表情は明るい。

「個人的な部分で言うと復帰戦なので楽しみしている部分はあります。ですが、チームとしては開幕戦もトラブルでうまくいかず、前戦の富士に僕はいませんでしたが、話を聞くところによると展開は良く、優勝も視野に入れることができたけれど、ああいったレース状況になってしまいました」

「というところでイマイチ噛み合っていません。昨年に比べると今回の鈴鹿はポイントを獲得していない分、鈴鹿へはウエイトが軽い状態で来ています。チャンピオン争いという意味で考えると、最低でも表彰台に乗りたいというのが目標ですが、実際はたぶんそこまで簡単ではないんだろうなという感じです(苦笑)」

 第2戦富士での好走に加え、SWが3kgと軽い点。そして、これまでもGT300規定車両が速さを見えてきた鈴鹿だけに、52号車も優勝候補となりそうだ。しかし、吉田は「予選から前に出ないと厳しい」と語る。

「今年はリストリクターが小さいのが本当に苦しいです。昨年もこっちはタイヤがすごく良い状態で、前のクルマはすごくタレている状況でもでも追い抜けませんでした。S字でどれだけ前のクルマに追いついても、抑えられてしまうと追い抜けないですし、130Rで仕掛けたくてもバックストレートで離されてしまうことが昨年はすごくありました。今年もリストリクターが小さいので、それがより出てしまうと思います。なので思っているよりも厳しそうですね」

2022スーパーGT第3戦鈴鹿 埼玉トヨペットGB GR Supra GT(吉田広樹/川合孝汰)

* * * * * *

 今回話を聞いたチーム以外にも、55号車ARTA NSX GT3(SW:0kg)、60号車Syntium LMcorsa GR Supra GT(SW:0kg)、87号車Bamboo Airways ランボルギーニ GT3(SW:9kg)、そして、昨年のウイナーである244号車HACHI-ICHI GR Supra GT(SW:0kg)など、高いポテンシャルを持ちつつも、軽い状態で鈴鹿を迎えた車両は少なくはない。

 SWの影響が大きいと言われる鈴鹿だけに、今大会の表彰台の顔ぶれは、過去2戦とはまったく異なるものにもなりそうだ。スーパーGT第3戦『たかのこのホテル SUZUKA GT 300km RACE』、走り出しとなる公式練習は5月27日の9時25分から行われる。全27台のそれぞれのタイム、そして挙動に注目したい。

© 株式会社三栄