【WEB版】紡がれた篠原ともえさんとの縁 「ジェンダーレス制服」誕生秘話 星野リゾートで採用 佐野の都ドレスが製造

ホテル「OMO7大阪」に採用された制服と都ドレスの松本聖子専務(左)ら=佐野市

 リゾートホテルや旅館を展開する星野リゾートが今春、大阪市内で開業した都市型観光ホテル「OMO7(オモセブン)大阪」の制服に、栃木県佐野市浅沼町の婦人服製造「都ドレス」(松本静夫(まつもとしずお)社長)が手がけた製品が採用された。着用する人の性別を問わないジェンダーレスな制服。デザインに大きく関わったのが、デザイナー、アーティストとして活躍する篠原(しのはら)ともえさん(43)だった。

 個性的なファッションで1990年代に「シノラー」ブームを巻き起こした篠原さん。現在はNHK紅白歌合戦の衣装制作や、世界遺産日光山輪王寺の御朱印帳のプロデュースに関わるなど、クリエーティブな分野で活動を展開している。

 都ドレスの松本聖子(まつもとせいこ)専務(41)が篠原さんと知り合ったのは3年ほど前。知人のアートディレクターで、後に篠原さんの夫となる池澤樹(いけざわたつき)さん(40)を通じ、ファッションイベントでコラボレーションしたのがきっかけだった。以後、松本専務は篠原さんの衣装作りなどを手伝うようになったという。

 松本専務に星野リゾートの制服デザイン公募の話を持ちかけたのも、篠原さんだった。これまでの関係もあり、同社の縫製技術を高く評価していた篠原さんが「一緒にやってみませんか」と誘った。

 都ドレスは大手アパレルメーカーの婦人服などを受注生産しており、星野リゾートの制服を手がけるのは初めてだった。

 松本専務は「作り手のノウハウを生かし、新しい事ができないか考えていた」と振り返る。篠原さんの誘いを快諾した松本専務は、篠原さんに伝えた。「もし公募が通ったら、ぜひ実家の工場で作らせてほしい」

 チームを組み、デザインは主に篠原さんが考案した。松本専務は素材選びなど、工場の立場から篠原さんに助言を行ったという。

 OMO7大阪は4月22日、大阪の観光スポット「新世界」に近いJR新今宮駅前にオープンした。星野リゾートが北海道、京都などで展開するOMOブランドで、充実したサービスを提供する話題のホテルだ。

 デザイン作成に当たり、篠原さんはOMOブランドの都会的かつシンプルといったコンセプトを熱心に研究していた。「今までにないような制服にしたい」というこだわりだった。

 何回も打ち合わせを重ねた結果、ホテルでは珍しいとされるTシャツスタイルに決まった。性別や年代などを問わず着用できるパンツスタイルにした。ジャケットなどもある。

 Tシャツは、「地図の目的地」をイメージしたドット柄でネイビー色。シンプルだが、スタッフが個性豊かに着こなせるように工夫の余地も残した。

 SDGs(国連の持続可能な開発目標)にも配慮した。サイズの種類を少なくし、製造時に素材の無駄が出ないようにした。これらのこだわりが採用の決め手ともなった。

 受注生産が主だった都ドレスだが、デザイン段階から製品作りに参画したことで、従業員の意欲向上にもつながっているという。

 松本専務は「工場が表に出る仕事はあまりない。一緒に良いものを作り上げるという新たなチャレンジができた」と喜ぶ。

 篠原さんとの縁から始まったチャレンジ。今後は他の縫製工場や加工会社などと連携した商品づくりも模索していく考えだ。「今回が新たな一歩になれば」と期待している。

 

 

篠原ともえさんがプロデュースした御朱印帳

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