自前のギャラリーで夢見た夫婦2人の写真展かなわず…急逝の妻に捧げた遺作展 南越前町の落井俊一さん、自らの作品は外し

オープンさせたギャラリーに、亡き妻一枝さんの作品を展示した落井俊一さん=5月19日、福井県南越前町湯尾

 福井県南越前町の写真家落井俊一さん(72)が、自身が経営する同町湯尾の国道365号沿いにあるそば店「藺敷(いふ)」の一部を改修し、ギャラリーをオープンさせた。こけら落としは、ともに写真を撮ってきた妻の一枝さんとの初の2人展と決めていたが、直前に突然の他界。まだ悲しみは癒やされはしないが、追悼の思いを込め一枝さんの遺作を並べ展示を始めた。

 俊一さんは、プロアマ問わず全国の写真家約1300人が所属する日本風景写真協会(本部京都市)の発足を呼び掛けた発起人で、3代目会長を7年間務めた。

 一枝さんは30年以上前に、俊一さんの影響で写真を始め、1997年ごろからはハスを撮るようになった。「やると決めたらとことんのめり込むタイプだった」(俊一さん)という一枝さんは、そばを打つ傍ら毎朝、近くのハス田や花はす公園に通い、四季折々のハスをカメラに収めた。メキメキと力を付け、2003年には写真集も出版した。

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 2年ほど前に、空きスペースになった建物の一部を活用しようとギャラリーへの改修を決めた。そのころから最初の展示は2人展と決めていた。これまで一枝さんの作品を展示する機会は少なく、そば店内にも同協会福井支部の会員の作品が飾られていた。「自分のも並べてとは、会員の皆に気を使って言わなかったんだと思う」(俊一さん)。

 改修工事の完成が近づき、実際に写真を飾ってみせると、一枝さんは「自分のが飾られてるっていいね」と喜んだ。しかし今月初旬のオープンを心待ちにしていた矢先、一枝さんは6日に体調を崩し入院。5日後に72歳で亡くなった。

 「俺の写真はいつでも飾ることができるんだから」と俊一さんは自分の作品を外した。「どこに出しても恥ずかしくない、ハイレベルな写真。もっと表へ出したい」と一枝さんの作品を回顧展として並べた。

 展示した作品は23枚。満開のハス、太陽が照りつける水面に映るハスの影、枯れ葉と共に落ちた蓮台(れんだい)など、四季折々のハスの美しさを伝えている。

 7月初旬ごろまで。来館無料。来館前に電話が必要で、俊一さん=電話090(4327)9466=まで。ギャラリーは今後、貸し出しも行う予定。

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