知床沈没事故 「海進」「新日丸」観光船引き揚げに貢献 建造の前畑造船「原因究明願う」

前畑造船で建造された「海進」(上)と「新日丸」(同造船提供)

 北海道・知床半島沖の観光船「KAZU Ⅰ(カズワン)」沈没事故で、カズワンの引き揚げ作業をした「日本サルヴェージ」の「海進」と、沈没現場海域で海中調査などに使われた「新日丸」はともに、長崎県佐世保市干尽町の前畑造船(北村與志郎社長)が建造した作業船。同造船関係者は、無事に引き揚げられたことに胸をなで下ろしながら、事故の原因究明を願っている。
 同造船によると、海進は2016年に建造された海難救助を主目的にした作業台船。総トン数は2973トン。全長約70メートル、幅約26メートルの長方形の船体で自力航行はできない。いかりを使わずに位置を保持するシステムを装備。中央付近に「ムーンプール」と呼ばれる開口部があり、波の影響を受けずに、同プールから海中作業の機材を降ろしたり、ダイバーが水中に潜ったりすることができる。
 新日丸は13年建造の捜索、水中調査などをする多目的作業船。全長約61メートル、幅約12メートル、総トン数は699トン。搭載した無人潜水機でカズワンの周辺を捜索した。
 同造船は1948年創業の歴史があり、旧日本海軍の戦艦「大和」建造の作業主任を務めた芳井一夫氏が初代社長を務めた。新日丸は2016年に行われた、鹿児島県沖で沈没した大和の調査にも携わった。
 造船が盛んな佐世保ゆかりの船が捜査、作業に貢献。北村社長は「海進は人の命を預かる船で、本社の技術の集大成。小さな造船所が手掛けた船が、役に立ってくれればと思う。引き揚げができて安心した。事故の犠牲者の冥福を祈り、原因が解明され、事故防止につながることを願う」と語った。


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