期待を抱かせる3度目のインディ500制覇。佐藤琢磨は決勝へ向け準備万端「感触は2017年、2020年と比較しても遜色ない」

 5月29日の決勝レースを間近に控えた第106回インディアナポリス500マイルレースの、最後の調整となるカーブデイでが27日に行われた。

 前日から予想されていた通り、午前中に雨がトラックを濡らした。コンディションが回復するのを待って、約2時間遅れで始まり、90分間のセッションとなる。

 ここまで順調にマシンを仕上げて来たデイル・コイン・レーシング・ウィズ・リック・ウェア・レーシングの佐藤琢磨は10番手のスターティンググリッドで確定したが、前日のメディアデイでは「明日のカーブデイで決勝に向けてもう少しやって確認したいことがある。だから雨は困ります……」と語り、カーブデイのテストプログラムの構想を練っていた。それがチップ・ガナッシらライバル勢に向けての対抗策であることは容易に想像できた。

 2時間遅れとはいえ、走行時間が確保できたことは琢磨も喜んだだろう。

走行への準備を行う佐藤琢磨
マシンに乗り込む佐藤琢磨

 セッションが始まると、まずはアウト、インのラップで確認していく。

 そしてセッション開始してしばらくしてから、本格的にライバルのマシンと走り始めた。スピードが乗り始めると9周めには226.839マイルまでスピードが上がり上位の顔を出す。

 チームメイトのルーキー、デイビット・マルーカスがセッション残り40分のところで、サンティーノ・フェルッチと軽く接触した後に、ターン1のウォールにヒット! マシンはかなりのダメージを受けてしまった。

 またセッション残り20分となった時には、琢磨の後を走っていたアンドレッティ・オートスポートのコルトン・ハータが姿勢を見出してウォールにヒット! マシンは裏返って宙を舞い落下した。ハータの安否が心配されたが、エアロスクリーンの付いたモノコックがハータを守った。

決勝へ向けてマシンを調整していく佐藤琢磨
3番手のスピードを記録する佐藤琢磨

 これでセッションは概ね終了となったようなものだった。琢磨は無事に3番手で終了。やはりガナッシ勢がトップにトニー・カナーン、2番手にマーカス・エリクソン、4番手にスコット・ディクソンと琢磨を囲むように並んだ。

 マシンを降りた琢磨は「今日は良いフィーリングでした。昨日試したいと言っていたことは、ほぼ試すことはできたし、クルマの仕上がりは90%、95%位のとこまでは来ていると思います。僕の持っている感触で2017年、2020年と比較しても、遜色ないところまで来ていると思います」

「車のフィーリングとしては、かなりレイホールのクルマ寄りになって、それにデイル・コインの味付けをした感じ。予選はデイル・コインのクルマにレイホールの味付けをした感じだったけどね(笑)」

「もちろんレースはどうなるかわからないですよ。気温も上がりそうだし、ピットでも何があるかわからない。最初のスタートで10番手だったら10番手から始まるし、8番手とかになれば、8番手からレースが始まる」

「できればダウンフォースは最小限にしたいし、もしスタートで中団のままだったら、上がってくるのに相当苦労することになると思います。でも最後の2スティントは、20年のようにまったく触らない状態で勝負できるようにしたい」

 9回のプラクティスをすべて終え、琢磨は500マイルの輪郭をしっかりと把握したように聞こえた。

 そして「チームがメカニックもエンジニアも本当に良くやってくれて、僕の話をいつも聞いてくれた」と付け加えた。

 レギュラーチームの中で最も小さいチームとも言えるデイル・コイン・レーシングで、ここまでの健闘は讃えられるべきだろう。小さいチームならではの結束力が、琢磨を大きく後押ししている。

 優勝した過去2回とほぼ変わらない状態というコメントは、レースに向けての琢磨の自信でもあろうし、我々に3回めの期待を抱かせる十分な言葉だった。

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