社説:北朝鮮制裁否決 深まる亀裂を埋めねば

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 国連安全保障理事会の機能不全が一層鮮明になった。

 弾道ミサイルの発射を繰り返す北朝鮮に対し、制裁を強化する米国作成の決議案を安保理が否決した。常任理事国の中国とロシアが拒否権を行使したからだ。他の13カ国は賛成した。

 北朝鮮の核・ミサイル開発阻止を目的とする安保理制裁決議案は、最初に採択された2006年以来、10回提案されてすべて可決されてきた。初めての否決である。ミサイル発射に加え、7回目の核実験をうかがう北朝鮮を国際社会が「黙認」したと受け取られかねない。

 これまで制裁に加わってきた中ロの方針転換は、北朝鮮を増長させる誤った判断だ。厳しく非難し、再考を求める。

 同時に、中ロと他国の溝の深まりを危ぶむ。ロシアのウクライナ侵略で高まる世界的な緊張に拍車がかからないか。日本を含め関係国は冷静に結束を高めつつ、外交手段を尽くして中ロと向き合わねばならない。

 米国と韓国との首脳会談に続き、日本で開かれた日米首脳会談、両国にインド、オーストラリアを加えた協力枠組み「クアッド」で、表現に違いはあるが、いずれもロシアの蛮行を非難し、軍事を増強して海洋進出をする中国への抑止姿勢を強く打ち出した。

 会合の終盤、中ロの爆撃機が日本周辺を共同飛行した。防衛省は両国の「示威行為」とみる。

 バイデン米大統領が帰国するや、今度は北朝鮮が3発の弾道ミサイルを発射した。これを受け、北朝鮮の核・ミサイル開発につながる「ヒト・カネ・モノ」の流入遮断へ制裁を強めるのが安保理決議案だった。中ロの否決は日米韓への意趣返しだろう。北朝鮮の暴挙を利用した威嚇は許されない。

 ただ、世界で孤立するロシアと北朝鮮に中国が接近し、日米韓との対立構図が一層エスカレートするのは危うい。北朝鮮を利して東アジア地域を不安定にし、経済にも悪影響を及ぼす。

 中国に圧力一辺倒では行き詰まる。日本は対中外交を広げる一方、政権が変わった韓国と関係改善を図り、ともに中国との対話の道を探ることも視野に入れたい。

 国連安保理はロシアの侵略に対して有効な決議ができないのに加え、今回の否決で存在意義が一層問われることになった。拒否権を使った常任理事国に説明を求める決議が採択されたばかりだが、乱用の歯止めにはならなかった。より踏み込んだ改革が不可欠だ。