RCサクセション初の武道館ライブ!失速のかけらもない清志郎のエネルギー  時空を超えるライブバンド、RCサクセションを追体験せよ!

未公開画像を織り交ぜ爆音上映「FIRST BUDOHKAN DEC. 24.1981 Yeahhhhhh……….」

あなたは、1981年のRCサクセションを知っていますか?

1980年6月5日、ライブアルバムの金字塔と言える名盤『RHAPSODY』をリリース。これは、2ヶ月前に行われた久保記念講堂におけるライブが収録されていた。周知の通り、このアルバムをきっかけに、ソウルフィーリングを内包したグラマラスなロックンロールバンドとして新基軸を打ち出したRCサクセションは、瞬く間にスターダムへと駆け昇っていく。

久保記念講堂はキャパが千人にも満たない小さな会場だった。ここから、ライブステージの頂点とも言える初の日本武道館公演まで、1年と半年。1981年12月24日、RCサクセションは武道館のステージに立っていた。

そのライブ映像が、5月16日、東京・EX THEATER ROPPONGIで爆音上映された。この映像自体は、すでにDVDとしてリリースされているものだが、ここには収録されていない本編最後に演奏された「ステップ!」など、未公開画像を織り交ぜた待望の上映となった。上映会といえども、この日の東京・EX THEATER ROPPONGIは、ライブハウスさながらの熱気に包まれていた。

観客の年齢層は、リアルタイムでRCサクセションを知る50代ぐらいが多かったように感じたが、スクリーンに注がれる熱視線から、彼らの中でRCサクセションが思い出の中のひとつではなく、今も心の中で熟成が続く、リアルなフェイバリットバンドだということが伝わってくる。

―― 1981年のRCサクセションは永遠だった。

時空を超えるライブバンド、RCサクセション

大きなスクリーンから放たれた映像は、RCサクセションのキーボーディスト、Gee2woのインタビューから始まる。1990年にバンドが活動休止して以来のRCに関するインタビューだ。

この中でも興味深かったのは、「バンドで何かを決める時、清志郎が… とか、チャボが… とかではなく、みんなで話し合って決めた」という趣旨の内容だった。

そう、RCサクセションはバンドとして転がり続けていたのだ。あの頃の5人でしか成し得ることのできないグルーヴだからこそ、清志郎は輝き続けた。清志郎が生涯自らをバンドマンと名乗っていたことを思い出し、胸が熱くなる。清志郎はバンドの中の自分の立ち位置を熟知して、あの、魂を焦がすようなステージパフォーマンスを繰り広げていた。他のメンバーもまた、それぞれの立ち位置、役割を意識し、あの熱狂を生んだのだ。80年代の幕開けと共にライブバンドの頂点に君臨することができたのだ。

そして、『RHAPSODY』のオープニングにも収録されていた「よォーこそ」から本編のライブはスタートした。映像の中で、観客の嬌声がEX THEATER ROPPONGIの客席にも溶けてゆく。音響システムはバッチリで、リンコのベースがビンビンに響く。チャボのギターが絡み、清志郎のシャウトが武道館の高い天井に響き渡る様子がダイレクトに伝わってくる。

時空を超えて、ライブバンドRCサクセションは2022年の今に現存していた。この日のセットリストは以下の通りだった。

1. よォーこそ
2. ロックン・ロール・ショー
3. Sweet Soul Music
4. ダーリン・ミシン
5. ガ・ガ・ガ・ガ・ガ
6. 多摩蘭坂
7. チャンスは今夜
8. 恐るべきジェネレーションの違い(Oh,Ya!)
9. あきれて物も言えない
10. トランジスタ・ラジオ
11. ブン・ブン・ブン
12. ステップ!
<アンコール>
13. スローバラード
14. 雨あがりの夜空に

今もリスナーの心の中で熟成するRCサクセションの音楽

清志郎は、走り回り、転げ回り、極限までシャウトし、魂の輪郭を浮き彫りにさせながら、武道館のオーディエンス、1万人と対峙してゆく。その熱量は、向こうみずというか、前のめりというか、過去も未来もそこにはなく、今立っているこのステージに人生を捧げているかのようだった。

ちなみに、この日の武道館のステージは、1983年に公開されたローリング・ストーンズの記録映画『スティル・ライフ』に収録されている彼らの1981年に行われた北米ツアーのステージと同様、舞台が緩やかな坂になっていた。つまり、魅せて、聴かせてというRCサクセションのロックバンドとしてのスタンスが、このようなステージのギミックにも現れていたのだ。

後半、「トランジスタ・ラジオ」、「ブン・ブン・ブン」、「ステップ!」と武道館のステージと客席はヒートアップしてゆく。その熱量が、EX THEATER ROPPONGIのフロアにも染み込んでゆく。こちらの観客は無言のままだけど、息を呑み、スクリーンに釘付けになり、40年以上前のグルーヴに心が揺さぶられているのがダイレクトに伝わってくる。

なんて素敵な時間なんだろう!

この日訪れた観客の心の中のRCサクセションは、決して色褪せた過去のバンドではなかった。人生を共に生き、今も数々の名曲は心の中で熟成しているのだ。

楽曲は生き続けていても、忌野清志郎はもういない…

本編最後まで清志郎のエナジーが失速することはなかった。そして、アンコール。Gee2woが奏でるピアノの旋律がゆっくりと会場全体を包み込む―― 「スローバラード」だった。

ここで初めて、熱量から解き放たれた悲しみが、僕の心の中を支配する。

こんなに美しい、こんなに夢心地な、こんなに自由な、こんなに圧倒的なバラッドを歌う清志郎は、いなくなっちゃったんだな…。

―― そんな風に考えてしまった。曲が素晴らしい分だけ悲しかった。僕をはじめ、80年代をロックと共に生きた多くの人の心の中で今も鳴り響いているだろう。楽曲は生き続けていても、清志郎はもういない…。そんな矛盾が一瞬だけ心を支配する。

だけど、僕らは1981年のRCサクセションを知っている。40年前に武道館の広いステージを駆けずり回り、転げ回り、思いの丈を歌にしたためマキシマムな熱量を放っていたバンドマン、忌野清志郎を知っている。

それはなんて素敵なことなんだろう!
ロックバンドとして頂点に上り詰めた瞬間のRCサクセションは永遠だ!

上映が終わり、拍手に包まれた会場を背にしたとき、そんなことを考えていた。

カタリベ: 本田隆

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