自分の物差しで語ってほしい 市川森一脚本賞20代初受賞 「きれいのくに」加藤拓也氏

 長崎県諫早市出身の脚本家、故市川森一氏の功績をたたえ、テレビドラマの優れた新進作家を顕彰する第10回市川森一脚本賞が、NHK連続ドラマ「きれいのくに」の加藤拓也氏(28)に贈られた。加藤氏は最年少での受賞。長崎新聞のインタビューに応じ「流行から外れようが外れまいが、自分の物差しで物事を語ってほしい」などと作品の意図を語った。

「自分の物差しで語ってほしい」と話す加藤拓也さん=東京都内

 -記念すべき第10回で、20代初の受賞。選考理由では「豊かなチャレンジ性と秀逸な作家性」が高く評価された。
 ドラマのフォーマットを少し外れたこのような作品を評価していただいたというのは、非常にありがたい。20代ということはあまり気にしていない。

 -「きれいのくに」は、美容整形のトレンドによってほとんどの大人たちが同じような顔になった社会が舞台。主人公の一人で顔にコンプレックスを持つ女子高生が整形するかどうか葛藤する。制作の意図は。
 外見の部分が話題として取り上げられてしまっているが、それよりもテーマとして根幹に据えていたのは、流行に対するマジョリティーとマイノリティーの差別や、トレンドによる分断。ルッキズム(外見に基づく差別や偏見)は後から付いてきた。
 はやっているものにどういう態度を取るのかは難しい。また、はやっているものを取り入れないと輪から外れてしまうという恐怖を抱いている人が多い。はやっていようがいまいが、自分の物差しで物事が語れるはずだと思う。

 -コンプレックスを持つ女子高生は、大人たちの美容整形のトレンドや、その後の政府の「整形禁止」政策のはざまで揺れながら、最後には「裏整形」で唇を整形する。
 コンプレックスは他人の尺度では測れない。他人が大丈夫だと言ったとしても、本人が気にしていることは自分の物差しで解消するという“手段”として描いた。

 -今後の抱負を。
 今、日本人だけでなく、いろいろな人種の人たちを制作チームに招いている。演劇だけでなくテレビや映画といった媒体でも、いろいろな人種の俳優に出演してもらいたい。グローバルな展開に取り組んでいけたらなと思う。

 【略歴】かとう・たくや 劇作家。大阪府出身。「劇団た組」主宰、「わをん企画」代表。ドラマ初脚本「平成物語」(2018年)が第7回、「俺のスカート、どこ行った?」(19年)が第8回の市川賞候補作となった。「きれいのくに」はNHKで21年4月から8週連続放映。現在、演劇と映像で脚本の執筆や演出などを幅広く手がけている。

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