有権者が投票する際に重要視する経済状況と生活意識はどのように変化してきているのか観察してみる(渡邉秀成)

2022年4月20現在円安傾向が続いています。
 1ドルが129円台にあり、
この水準は20年ぶりであるとニュース報道等が流れています。
 最近はインターネットを利用した個人輸入を利用する人も多く、
為替レートについて敏感になっている人も多くいます。
 SNS上の書き込みを見ても、
円安による影響で海外に注文した商品決済価格が今までよりも高くついてしまい、
円高に戻ることを期待する人が多くいることがわかります。
 円安、ガソリン、小麦を利用した食品価格の上昇等、
日常生活にもさまざまな影響が出始めています。
 このような経済環境の中で2022年7月には第26回参議院議員選挙が予定されています。
 選挙で投票する際に有権者が最も多く考慮する内容としては、
景気、雇用、年金といった生活に直結した内容です。

 このように有権者が投票時に重要視するのが生活に関係するものですが、
過去の選挙時における有権者の生活意識がどのようなものであったのか?について
厚生労働省の国民生活調査、日本銀行の生活意識に関するアンケート調査から見ていきたいと思います。

 まず最初に国民の1世帯あたりの平均総所得金額の推移について、
厚生労働省 国民生活基礎調査から見ていきます。
 下のグラフは1986年から2018年までの1世帯あたりの平均総所得金額の推移をグラフ化したものです。

このグラフを見る限り1994年に最も高くなっており、
その後の1世帯あたりの平均総所得金額は低下傾向になっているのがわかります。
 「失われた30年」、「就職氷河期世代」等、
景気に関する言葉がいくつも誕生してきましたが、
賃金はなかなか上昇していないことがわかります。

 このような全体的に賃金が上昇しにくい傾向にあるなかで、
人々の生活意識がどのように変化しているのかについても見ていきます。

日本銀行の生活意識にアンケート調査を見てみると、
「1年前と比べて、今の景気はどう変わりましたか。」という設問に対する回答を
グラフ化したものです。

 景気が悪くなったと回答する人の割合が多かった2008年から2009年はリーマンショックと呼ばれる、
世界的な金融危機がありました。
 そのため景気が悪くなったと回答する人の割合が増えたと思われます。

 その後、景気が悪くなったと回答する人の割当は低下傾向にあり、
景気は1年前と比較しても変わらないという回答が多くなりますが、
2019年12月くらいから景気が悪くなったという回答が再び増えてきています。
 これは新型コロナ感染症に関するものが影響しているものと思われます。

 生活環境をどう感じるかは居住地域、年代、就業業種、家庭環境等により大きく異なることではありますが、
景気が悪くなったと感じる人が多くなると、
いつもの選挙よりも有権者は各政党の経済対策がどのようになるのかを見極めて、
投票政党決めるようになると思われます。

 もう一度、有権者が投票する際に重視する内容の調査結果を見ると、
生活に密接するものが常に上位にきています。
 今、話題として出てくることの多い憲法改正より現在の生活をどうするかを重要視していることがわかります。

 今後の国の方向性を決める憲法改正等の重要事項に関しては、
国民生活が安定している時期で、
冷静に判断できる環境を整えた上で、
決めたほうが長期的に見た場合に良い選択ができるような気がします。

 今回は有権者が投票する際に重要視する内容の順位と、
経済環境、生活意識に関する各種データを見てきました。

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