京都市で保育施設の定員割れが深刻化 「運営維持に切実、速やかに対策を」

京都市役所

 9年連続の「待機児童ゼロ」が続く京都市で、保育施設の定員割れが深刻化している。収入減に直結するため各園は柔軟な定員の設定を求める一方、利用者側にとってはゆとりある受け入れ体制が望ましく、市は難しい調整を迫られることになりそうだ。

 市は長年、保育施設の運営法人に対し施設の新設や増築などを求め、受け皿の拡大を主導してきた。いまだに待機児童の解消に苦慮する政令指定都市もある中「ゼロ」を積み重ね、市が掲げる「子育て環境日本一」の根拠としてきた。

 一方、少子化などにより2019年以降は市内全体で定員割れが拡大している。今年4月時点では全体の6割に当たる257施設で計2857人分の定員割れが生じ、前年同期比では508人分増えた。

 園側にとって定員割れは経営への打撃となる。スケールメリットの観点で、市から園に支給される園児1人当たりの給付費は定員の設定が大きいほど低くなるからだ。例えば3歳児100人を受け入れる場合、定員100人では1人当たりの給付費(月額)が4万4020円になるが、定員120人では4万710円に下がる。必要な保育士数はそれぞれ変わらない。

 定員を引き下げるためには市との協議が必要で、個々の施設だけではなく近隣の地域全体で定員割れが続いていることなどが条件として定められている。市保育園連盟は2020年に改善を求める要望を市に出しており、連盟の担当者は「園側にとって運営の維持のためには切実な問題で、速やかに対策を図ってほしい」と訴える。

 市も対応の必要性を認め、門川大作市長は昨年の11月議会で、定員と利用園児数のかい離を埋める制度を検討する意向を明らかにした。市幼保総合支援室は「子どもの増加が見込まれる地域もあり、保育ニーズを考慮する必要は引き続きある。なるべく早く方向性を示したい」としている。

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