<社説>知事選構図固まる 政策論争の充実を望む

 選挙イヤーの天王山となる9月11日投開票の県知事選は、現職の玉城デニー氏と前宜野湾市長の佐喜真淳氏による対決の構図が固まった。 基地問題、コロナ対策、経済再建など県政の課題は山積する。沖縄のかじ取りを任せるにふさわしいのは誰なのか。政策論争を充実させ、明確な針路を示すよう両氏に望む。

 オール沖縄勢力が推す玉城氏は、施政権返還50年の節目に合わせて公表した新建議書で示したように「基地なき沖縄」、ソフトパワーを生かしたアジアの結節点構築などを主張するとみられる。

 自民が擁立する佐喜真氏は、候補者選考の公開討論会でコロナ感染拡大防止と「経済再起動」を冒頭に挙げた。過重な基地負担軽減も掲げ、普天間飛行場の返還実現へ政府との対話を訴えた。

 今回も最大の争点になるであろう辺野古新基地問題に関しては、埋め立ての賛否を問う2019年の県民投票で、投票者の7割超が反対の意思を示した。民意が新基地建設断念にあることは明らかだ。

 玉城氏は県政を担って以来、一貫して辺野古反対を訴えてきた。佐喜真氏は「適切な時期に発表したい」として、現時点では賛否を明確にしていない。ただはっきりしているのは、普天間の危険除去は辺野古新基地が条件ではないということだ。返還合意から四半世紀を超えた。辺野古の海域では軟弱地盤も見つかり、工事の実現性自体が問われ、仮に建設しても工事の長期化は避けられない。

 まずは「世界一危険」といわれる市街地からの基地撤去を追求すべきである。実効性ある政策提言は県民が最も期待するところだ。

 一方で県民所得の向上と貧困の解決、コロナ後を見据えた経済再建など生活に密着する課題に対しても、具体的な政策が求められる。

 本年度から始まった第6次沖縄振興計画はSDGs(持続可能な開発目標)を取り入れ、環境に配慮した地域づくりや経済発展を目指す。

 世界自然遺産に代表される生物多様性、王朝文化に象徴される独自性など沖縄の持つ力を発揮した持続可能な観光コンテンツ開発などで、県民が等しく利益を享受できる枠組みが求められる。

 戦後沖縄の課題である自立型経済の構築へ向け、それらの優位性を活用し、観光だけでなく関連する産業を含めて県全体の発展に結び付ける両氏の構想が問われる。経済の好循環で得られた果実を貧困や福祉の向上、環境問題といった課題の解決に振り分ける手腕も必要となるだろう。

 7月に予定される参院選を皮切りに、9月に向けては統一地方選も知事選とほぼ同日程で実施される。

 リーダーや議会に送る住民代表を選ぶ選挙戦を通し、各市町村が抱える課題を改めて問い直す機会でもある。有権者の注目にふさわしい論戦を展開してもらいたい。

© 株式会社琉球新報社