岸田内閣の支持率、世論調査と投資家の間になぜギャップが生まれるのか

岸田内閣の支持率が政権発足以来最高になった事が報じられました。

FNNの電話世論調査で支持率68.9%、共同通信社の調査でも55.7%、朝日新聞の調査で59%といずれも過去最高を記録しています。調査方法や有効回答は異なるにせよ、過去最高を記録したのは事実です。

第2次岸田政権が発足して約半年が経過しますが、発足後、半年の支持率が50%を超えたのは、小泉純一郎内閣、第2次安倍晋三内閣、そして今回の岸田文雄内閣、この3名による内閣のみであり、異例の高支持率となっています。

ただ、個人投資家からは、なぜこれほどまでに支持率が高いのか、疑問に思っている方が多いように感じます。


投資家からの支持率は3%

その要因は総裁選で掲げた政策の中で、「金融所得課税の見直しなど『1億円の壁』の打破」と明記し、金融所得課税を強化する考えを示した事が挙げられます。金融所得課税とは、株式の配当金や譲渡益など、金融所得にかけられる税金です。現在一律20%になっている税率を引き上げるとした発言が、投資をしている人たちから反発を招きました。

また、岸田首相は就任以来、成長と分配の好循環を目指す「新しい資本主義」を掲げ、市場偏重・株主偏重の資本主義がもたらした歪みの是正に取り組む考えを示し、企業が株主に利益を還元する意味合いをもつ、「自社株買い」を規制するとの発言もしました。こうした内容を首相自らが立て続けに発言をしている事は株式市場にとってとてもネガティブです。岸田総理が発する株式市場に後ろ向きな発言に困惑している投資家サイドからすれば「なぜこんなにも支持率が高いのか?」と、首を傾ける方が多いのだと思います。

実際、日経CNBCが1月27日から1月31日の期間、「投資家サーベイ」と銘打ち岸田内閣への支持の有無を調査した結果、「いいえ(不支持)」が95.7%と大半を占め、「はい(支持)」はわずか3.0%、「分からない・どちらでもない」は1.3%と公表されました。95.7%が不支持という結果は数字が大き過ぎて驚きました。

とはいえ、現時点での各社の世論調査は過去最高の支持率となっている事は紛れもない事実です。投資家人気は依然として低いままと思いますが、仮に岸田政権が長期政権となれば、株価にポジディブに働く可能性も否定できません。それは過去の株式市場を振り返ると長期政権時は株価が堅調に推移しているからです。

長期政権が株価にもたらす影響

私が社会人になってから約30年間を振り返ってみると、日本の首相は短命で終わる事が多いのです。約30年間で18名が首相をされています。実に1年数か月で辞任するペースで短命政権のオンパレードでした。

そんな中、歴代最長は安倍元首相で約8年間、2,800日間、首相に在任されました。1,000日を超える首相は、中曽根氏、小泉氏、安倍氏の3名であり、後者2名は発足後、半年の支持率が50%を超えています。

長期政権の時の株価は堅調に推移する傾向があり、逆に短命政権の時は軟調の場合が多いです。それは、政策がスムーズに進まない事が要因だと思います。1つの政策を成功させるには、数年間の時間を要するはずで、中心的役割はやはり首相です。首相が変わるたびに政策の主軸がぶれていては、海外投資家や機関投資家が日本市場から距離を置くことも、頷けます。


先週(5月22日〜)は米国のバイデン大統領が来日され、日米首脳会談が開催されました。

ロシアによるウクライナ侵攻や対中国を見据え、同盟国である日米が国際社会を主導し、「自由で開かれたインド太平洋」の実現など国際秩序を断固として守り抜く必要性を改めて両国で確認しました。

また、日米パートーシップで半導体や脱炭素、鉱物資源の供給など協力を強化する事が確認されました。こうした取り組みにより、恩恵を受ける日本企業も今後増えてくると思われ、日本株への期待も高まります。

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