パペットで東京の文化を世界に… コロナ禍で仮装ができず“転身”

手を入れて動かす表情豊かな人形「パペット」を使い、東京をはじめとする日本の文化を短編動画として世界に発信している女性に密着しました。動画を撮り始めたきっかけは、コロナ禍で仮装ができないという一風変わった理由からでした。

東京・新宿にあるアパレルショップ・ビームスジャパンが「東京のポップカルチャー」として目を付け、店内に展示しているのは、人形劇などで使われるパペットです。回転ずしをモチーフにしたパペットなどおどけた表情で個性豊かな人形たちが並べられています。これらのパペットは短編動画に登場し、銭湯で風呂の入り方を注意したり筆を持って書道に励んだりと、東京をはじめとする日本の文化を世界に向けて発信しています。

この動画を制作しているのは「スタジオバニー」代表の伊藤沙帆さんです。伊藤さんは渋谷区でカフェを営む傍ら、2020年から短編映像を作り始めました。絵コンテ作りから映像編集まで手掛けていますが、以前は映像制作に関わったことはなかったということです。伊藤さんは「全くの素人でした。お客さんの中に映像の"師匠”がいて、その人に指導をもらっている」と話します。

カフェの常連客たちと力を合わせ、これまでにパペット20体以上を使い、15本以上の短編を作ってきた伊藤さんですが、動画制作を始めたきっかけは"生きがい”としていた「仮装」ができなくなったことでした。

自分のカフェの出し物として披露した仮装が評判となったことからすっかり仮装にのめり込み、2016年には日本有数の大会で優勝した伊藤さんは、その後も活動を続けていました。しかし新型コロナウイルスの影響で、全国の仮装大会は軒並み中止になっていったといいます。伊藤さんは「何か作ってみんなに発表する場がなくなったのは悔しかった。中止となった時は『私の1年に1回の祭りが終わっちゃった』と感じた」と振り返ります。

生きがいである「表現の場」を失った時、新たな表現方法として思い付いたのがパペットでした。伊藤さんは「(仮装とパペットは)全然似ていないですよね。でも何かになり切らないと照れくさくて言えないこと、表現できないことを、私ではない何かで表現するのが私の好きな手段なのかもしれない」と話します。

自らの分身とも言えるパペットで紡ぐストーリーの先にある舞台は"世界”です。伊藤さんは「世界にパペットを連れて行きたい。ニューヨークの路上や劇場でショーをしてみたい」と話し「ブロードウェイ、待ってろよ!」と目を輝かせました。

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