“脱マスク”いつ、どこで? 長崎大学病院 専門家に聞く 泉川氏・自分で着脱の判断を/森内氏・屋外の子ども弊害も

(写真左から)子どもへのデメリットを語る森内教授=長崎市坂本1丁目、長崎大学病院、「各自が判断する段階」と語る泉川教授(オンライン取材)

 新型コロナウイルス対応を巡り政府はマスクの着用基準を公表した。ウィズコロナに向けたマスクの在り方について専門家はどう考えるのか。長崎大学病院感染制御教育センター長の泉川公一教授と、同院小児科長で日本小児感染症学会理事長なども務める森内浩幸教授にそれぞれ聞いた。
 マスクの感染予防効果について2人は「着用していれば完全に防げるわけではない」と口をそろえる。森内教授は海外の学校を対象にした研究で、マスクの感染予防効果が2割台だったとの事例を示した。泉川教授は「病院や高齢者施設などのクラスターの発生率を下げる効果ははっきりと出ている」とする一方、「一般的なマスクではエアロゾル(空気中を長く漂う微小な粒子)による感染予防はできない」と話した。ただ換気や手指消毒など複合的な対策で予防効果を高めることはできるという。
 文部科学省は24日、都道府県教委などに示した事務連絡で、熱中症のリスクが高い夏場は登下校時にマスクの着用は必要ないと明記。自分で判断が難しい年齢の子どもには屋外ではマスクを外すように積極的に声をかけるように通知した。
 森内教授は「大人は苦しくなったら自分の意思で外すが、子どもは着けているように言われると苦しくても気を失うまで着け続けていることがある」として「屋外では感染のリスクはほとんどないのに、マスクをすることでデメリットは大きくなる」と分析する。
 泉川教授も「例えば通学で公共交通機関を使う場合は着ける、外で苦しくなったら外していいが、友だちと大きな声で話さず距離を保つ-など先生や保護者が細かく伝えてあげることが重要」と話した。
 ウィズコロナ時代のマスク着用について、泉川教授は「これまでは国の要請で着用していた部分があると思うが、これから自分で判断していく必要がある。国が基準を示したのは、リスクが少ない場面でも人目を気にして外せないという人にとってのお墨付きを与える意味があったと思う」と見解を示す。
 森内教授も「ウィズコロナで生きていこうと思うので『常にすべきだ』『絶対すべきでない』みたいに極端なことでは困る。中間の“グレー”の範囲は広く、その判断は人それぞれで違うのが当たり前。例えば家族に基礎疾患がある人だったら、絶対にウイルスを持ち帰りたくないと思って外さないかもしれない。グレーゾーンについて許容する姿勢が必要」とこれからの社会の在り方に提言する。
 子どもの発育への懸念についても森内教授は言及する。「人には学習の臨界期と呼ばれる時期があり、言葉を覚えたり、絶対音階を身に付けたりするのは一定の年齢を過ぎると無理だ」とし、「表情で相手の感情を読み取る能力にも臨界期があるという研究がある。まだ証明されてはいないが、大きなデメリットとして考えておかなければならない」と話した。


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