円谷英二が特撮を担当! 三船敏郎×松本白鸚『士魂魔道 大龍巻』の見どころ&ウルトラ怪獣消しゴムの思い出

『士魂魔道 大龍巻』DVD発売中発売・販売元:東宝

『シン・ウルトラマン』と怪獣消しゴムの思い出

ついに『シン・ウルトラマン』が公開された。これは絶対に見に行かなければならない! なぜなら私も子供の頃から『ウルトラマン』シリーズ(1966年~)を見てきた世代で、オンタイムではないが、再放送でハヤタ隊員が変身する初代ウルトラマンから、ウルトラセブン、帰ってきたウルトラマン、ウルトラマンA(エース)、ウルトラマンタロウにウルトラマンレオと、ひと通り見て影響を受けた子供の一人であるからだ。

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もちろんウルトラマンも人気だったが、私が小学校低学年の時に一大ブームを巻き起こしたのが、シリーズに出てきた怪獣のゴム人形、怪獣消しゴムだ! 消しゴムと言っても鉛筆の文字を消せるわけではなく、手のひらサイズの小さなゴム人形である。これは大人になってから知ったのだが、消しゴムと名づけることで小学生が学校に持って行けるから、という理由だそうだ。

この怪獣消しゴムは、当時うちの滋賀の田舎ではスーパーの軒先や、おもちゃ屋の前、地元の小さなデパートの階段の踊り場などに設置されていたガチャガチャで、親から小銭をもらいガチャガチャに投入して、ワクワクしながらハンドルを回してゲットしていた。ガチャガチャにも種類があって、一つしか怪獣が入っていない小さいカプセルは20円で回せて、何個か入っている大きなカプセルは1回100円だった。

有名どころではジャミラにゴモラ、ダダにバルタン星人、ゼットンにエレキング、メトロン星人にキングジョーと、数々の怪獣や異星人のゴム人形をゲットしていき、ドラマの中では悪者なのに、そのフォルムのカッコ良さに私を含む当時の子供たちは魅了されていた。

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さて、その怪獣消しゴムを集めて何をするかというと、当時の小学生はこの怪獣消しゴムを使って“トントン相撲”をするのである。母親からお菓子の空き箱をもらい、その中に集めた怪獣消しゴムを入れ、箱の裏側に丸い土俵を書き、その上で友達の怪獣消しゴムと箱の隅をトントン叩いて対決させるのだ。この遊びは学校でも大流行で、休み時間になると、そこかしこでトントン相撲が繰り広げられていた。そして負けた側は、対戦相手に怪獣消しゴムを取られるというルールだった。我々より古い世代の子供たちがメンコで遊んでいた時代、自分のメンコで友達のメンコを裏返せば貰えるのと同じやり方である。

そんな怪獣消しゴムのトントン相撲だが、私は最強の怪獣を持っていた。それはレッドキングという名の怪獣。初代ウルトラマンの第8話に出てきた怪獣で、別名ドクロ怪獣と呼ばれていた。デザインはあの成田亨氏で、顔は竜や蛇をイメージして作られており、全身が蛇腹のような凸凹な体なのだ。これがめちゃくちゃカッコよくて、当時の私の宝物だった。そして、なぜこのレッドキングがトントン相撲で最強だったかというと、この怪獣の足の裏から尻尾の付け根にかけて、つまり地面と接地している部分をストーブに当てて溶かし、真っ平らにしてその面をツルツルにし、接地面積を大きく広げてあったのだ。これによって、いくら箱をトントンしてもこのレッドキングは微動だにせず、全く倒れなかった。

私はこのレッドキングのおかげで連戦連勝の無敵の快進撃! 箱に入りきらないほどの怪獣消しゴムを手に入れた。しかし、さすがに友達もおかしいと気づきはじめ、挙句の果てに学級会の議題に挙げられ、担任の先生のもと、巻き上げた怪獣消しゴムはそれぞれみんなに返し、不正という名の加工レッドキングはトントン相撲界から永久出場停止の処分を下されたのだ。

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特撮が懐かしくも古さを感じさせない『士魂魔道 大龍巻』

そんな懐かしい思い出から、今回のおすすめ戦国映画は、1964年(昭和39年)に公開された『士魂魔道 大龍巻』。この作品は当時の宝塚映画が制作し、東宝が配給したお正月映画だった。

物語は豊臣方が滅びる大坂夏の陣、落城寸前の大坂城から始まる。豊臣方の3人の若き侍が、それぞれの最後を迎えようとしている。討死覚悟で敵陣に突撃しようとする者、また一人は鎧を脱ぎ捨て逃げ延びようとする者、城を枕に切腹しようとする者と、三者三様の考えで落城を迎えようとする。しかし、それぞれの思惑とは違った数奇な運命を辿っていくことになる……。

主演は、まだ六代目市川染五郎を名乗っていた頃の二代目松本白鸚さん。他にもGメン’75やラリードライバーでもお馴染みの夏木陽介さんや、ヤクザ役から刑事役まで幅広い演技に定評のあった佐藤允さんも若き侍を演じておられる。ヒロインには使命を受け落ち延びるお姫様役に星由里子さん。さらにはこの若き侍をピンチのたびに助ける虚無僧が出て来るのだが、この役に世界の三船こと三船敏郎さんが脇を固めている。

主役の3人の若き侍は架空の人物だが、三船敏郎さんの演じている役は宇喜多家の家臣であり、関ヶ原の戦いの際に西軍に属しながら包囲網の一角を突破して戦場を離脱し、その後は消息が不明となった武将・明石全登(あかしてるずみ)なのだ。このあたりが、戦国オタクにはたまらない!

そして、この作品の監督は日本映画の基礎を作った一人であり、チャンバラに頼らない時代劇を数多く手掛け、髷をつけた現代劇とも呼ばれた巨匠・稲垣浩氏。そして注目すべきは、ウルトラマンやゴジラの生みの親であり、“特撮の神様”とも呼ばれた円谷英二氏が特殊技術を手掛けているところだ。

作品冒頭の大坂城が大砲によって崩れていく様や天守閣が焼け落ちていくシーンは、もちろん現代のようにCGではなく、円谷英二氏が手がける特撮によって繰り広げられるのは懐かしくもあり、昭和世代にはたまらない。そこに稲垣監督の撮る人間模様のドラマが絡み合って、より物語を面白くするのである。私が最近見た古い映画の中でも古さを感じさせない、かなり面白い戦国映画だと痛感したのは言うまでもない。

『士魂魔道 大龍巻』DVD発売中 発売・販売元:東宝

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勝敗はどうやって決まる?“兜首”と負け戦のその後

さて今回の戦国雑学は何を書こうか迷っていたのだが、映画からの派生としては、戦国時代の戦さでどのように勝敗が決まるのかを皆さんはご存知だろうか?

映画やドラマ、漫画やゲームの中ではあたかも負けた側がほとんど死んでしまって、勝敗が決まるように思っている人もいるかもしれない。しかし実際には、そこまで死者は出ないのである。特に負けた側の足軽など最下層の兵士の首などは獲っても大した褒美などもらえないし、兵農分離がしっかりできていない時期などは、せっかく奪い取った領地の年貢の米を作ってくれる農民を殺すわけにはいかない。討ち取るのはあくまで“兜首”と呼ばれる侍の首だけで、負けた側の足軽は負け戦さと分かると、ほとんどが逐電(ちくでん)、つまり戦場から逃げてしまうのである。それによって部隊は統率を失い、敵兵によって侍大将のような部隊長クラスの首が獲られる……という仕組みなのだ。

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もちろん幹部クラスの侍でも首を獲られず、捕らえられて勝った側に再雇用されるケースもある。だが逃げた足軽などはしれっと自分の地元に戻って、新しい領主のもと農業に励む者や、戦場を逃げる際に武具や馬を盗み、そのまま徒党を組んで野伏(のぶせり)に身を落とし、村々を襲って生計を立てるような者もいた。負けた側を皆殺しにするのは西洋の戦い方で、日本はそんな厳しいことはなかったのだ。それが故に、西洋のチェスは取った駒を使えないが、日本の将棋は相手から取った駒を何度も自分の駒として使えるのである。

さて、これからの梅雨の時期は皆様も是非、自宅で昭和の特撮を見てからの、映画館で最新の円谷イズムをご覧になることをおすすめしたい。

文:桐畑トール(ほたるゲンジ)

『士魂魔道 大龍巻』はDVD発売中、Amazon Prime(東宝名画座)ほか配信中

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