「全員で強くなる」理想を現実に ブレックスを頂点に導いた安斎監督

優勝を決め比江島(6)と喜び合う宇都宮の安斎監督=東京体育館(代表撮影)

 昨年の忘れ物を取り戻した。29日のBリーグチャンピオンシップ(CS)決勝第2戦で琉球を破り、頂点に立った宇都宮ブレックスの安斎竜三(あんざいりゅうぞう)監督(41)。史上最年少でリーグ制覇を成し遂げた若き指揮官は、泣いて、笑って、コーチ陣と抱ようをかわした。「最高です。皆さんの声援で勝ち取れました」と感慨を口にした。

 チームの歴史と歩んできた。創生期の2007年に加入し、10年に主将としてJBL(日本リーグ)初優勝に貢献。その後は13年からアシスタントコーチとなり、17年にBリーグ初制覇。翌シーズン途中から監督に就いた。

 「誰かに偏らないバスケ」を目指してきた。背景には苦い経験がある。16年に東芝神奈川(現川崎)と激突したプレーオフ準決勝。シーズン大半の時間でコートに立ち続けた主力が試合中に肉離れを起こし、柱を欠いたチームは敗退。この頃からプレー時間を共有し、互いを補い合いながらシーズンを乗り切る戦法の確立に心血を注いだ。

 その中で選手に強く求めたのが自己犠牲心だ。「自分の思いを殺してでも全員がチームのために行動する時は勝てる。結果で学んできたこと」。それを体現したプレーを評価し、特定の誰かをヒーローとしてたたえることは、ほぼなかった。自身も選手の姿勢に応えようと「全員を使って強くなること」にこだわってきた。

 今季、チームが軌道に乗らない時期に「僕も変わらないといけない」と葛藤を明かしたことも。上位を目指す上で落とせない試合は、出場時間を大幅に削る選手が出てくる可能性を示唆しつつ「本当は外したくない。チャンスをあげれば、すごく活躍するかもしれない」。選手が壁を破ることを願う親心をのぞかせながら、理想と現実のはざまで揺れた。

 何度も壁にはね返されながらも選手を信じ、就任5年目でつかんだ初タイトル。だが、いつもと変わらず仲間をたたえ、最後に会場へ呼びかけた。「ここに素晴らしい選手、スタッフがいます。もう一度大きな拍手をお願いします」。いかにも安斎監督らしい締めくくりだった。

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