対面と同等の目標達成 長大付属小中のオンライン授業 ネット環境、対話交流など課題

ホワイトボードなどを使ってオンライン授業に取り組む長崎大付属中の教員=長崎市文教町(2021年9月、同校提供)

 新型コロナウイルス感染第5波の最中だった昨年9月、長崎大付属小と付属中(いずれも長崎市文教町)で実施されたオンライン授業について、対面と同等の目標を達成できたと多くの教員が肯定的に捉えたとの研究報告書を同大教育学部がまとめた。家庭のインターネット環境格差や対話交流の難しさ、目の疲れなど課題も浮き彫りになった。
 オンライン授業は昨年9月1~6日の平日4日間に実施。政府のGIGAスクール構想で1人1台配備された端末を使用した。各家庭でネット環境が異なるため、希望者にはWi-Fiルーターを貸し出した。
 報告書は児童生徒、保護者、教員らを対象にアンケートやインタビューをしてまとめた。教員は同小の88%、同中の95%が「オンライン授業でもねらいは達成できた」と肯定的に回答。オンラインで実施可能な教科として算数や数学の計算問題や知識の伝達、定着に関することを挙げた。
 保護者は同小の89%、同中の93%が「オンライン授業にはメリットがあった」と回答。理由として感染リスクの低減や学校に行けない場合も教育を受けられる安心感などを挙げた。
 対面授業とオンライン授業のどちらを好むかについて児童生徒の反応を見ると、女子は小学1~4年で対面を好む傾向がやや高いが、小学5年~中学3年では同じくらい。男子は小学6年と中学1年でオンライン授業を好む傾向が高かった。中学生は内向的な生徒の方がオンラインを好む傾向があった。
 自由記述では中学生の35%が音声の乱れやタイムラグなど不安定な通信環境に不満を訴えた。保護者からは「子ども1人では接続トラブルに対応できない」などの声が上がった。
 対話や交流の難しさも浮き彫りに。中学教員の91%がパソコンスキルや設定上の問題でペア活動やグループ活動ができなかったと回答した。対話を通して学びを深める学習は困難という声もあった。中学生の13%が「友達との交流や授業中のやりとりをもっと増やしてほしい」と要望した。
 目や身体の疲れを指摘する声もあった。中学生の10%が「画面から目を離す時間をそれなりに確保してほしい」と訴え、保護者の20%が子どもが疲れていたと回答。保護者の自由記述から「肩が凝る」「目が痛い」「腰が痛い」などと不調を訴える児童生徒が少なからずいたことが分かった。
 報告書の取りまとめに携わった前原由喜夫同学部准教授は「オンライン授業は、ディスカッションが難しいなどの理由で、対面授業の完全な代替手段にはならないが、工夫次第である程度充実した授業はできる。今後の情報通信技術(ICT)教育の在り方を考えるために今回の調査研究が役立てば」と話している。


© 株式会社長崎新聞社