第106回インディ500詳報:エリクソンがガナッシに10年ぶりの勝利を届ける。琢磨は挽回ならず

 第106回インディアナポリス500マイルレースの決勝レースが29日に行われ、予選5番手からスタートしたチップ・ガナッシ・レーシングのマーカス・エリクソンがインディ500初勝利を挙げた。

 予選からライバル勢に大きなリードを突きつけていたチップ・ガナッシ・レーシングがレースでも強さを見せつけて勝利を飾った。ポールシッターのスコット・ディクソンはレース終盤のピットスピード違反というミスで後退し、予選2番手だったアレックス・パロウはそれよりずっと前にイエローの出たタイミングの不運さで勝機を失ったが、予選5番手のマーカス・エリクソンが優勝を飾り、予選6番手のトニー・カナーンは3位でゴールした。

チケットはほぼ完売し30万を超える観衆が駆け付けたインディアナポリス・モータースピードウェイ

 スタートは午後12時45分。気温が摂氏24度。路面温度は42度とこの時点ではまだそんなに暑くないコンディションだったが、周回を重ねるにつれてジリジリ温度は上がっていった。

 ディクソンとパロウがトップポジションを入れ替えながらリードを続け、彼らに対抗できる相手は出てこない可能性すら感じられた。何とか彼らとバトルし続けていたのは、ディクソンと同じ早めのピットタイミングを採用して一気に2番手まで浮上したコナー・デイリー(エド・カーペンター・レーシング)だけ。

ディクソンとパロウが交互にレースをリードしていく

 予選3番手のリナス・ヴィーケイ(エド・カーペンター・レーシング)はクラッシュで早々に姿を消し、エド・カーペンターは慎重なセッティングとし過ぎたのかスピード不足だった。

 レース終盤にはアロウ・マクラーレンSPのコンビが勝利にチャンンジした。フェリックス・ローゼンクヴィストとパト・オワードどちらもレースをリードしたが、長くその位置を保つことは難しかった。

 そして最後はエリクソンとオワードの戦いになった。レースの後半戦では気温が28度まで上がり、路面温度は50度になっていた。

 ジミー・ジョンソン(チップ・ガナッシ・レーシング)の単独クラッシュにより、3秒あったエリクソンのリードは霧散。残り2周のリスタートは2番手につけるオワード優位とも映っていた。

 しかし、エリクソンがトップを守り通した。

 最終ラップのターン1でオワードがアウトから並びかけたが、オーバーテイクを完成できず、引き下がるしかなかった。その彼らの後方、ターン2でセージ・カラム(ドレイヤー&レインボールド・レーシング)のアクシデントが発生。レースはチェッカー&イエローフラッグで終了した。

2ワイドでターン1に入るエリクソンとオワード

「あのままアウトにつけていたら“壁送り”にされていた」と負けたオワードは批判気味に話した。勝利を逃した悔しさもあってのこどだろう。

 対するウイナーは、「ぶつける気なんてなかった。彼がこちらを抜くのはかなり難しかったと思う。インサイドを確保できたら、こっちは全開で抜けられるとわかっていたので」と反論した。

1999年のケニー・ブラック以来ふたり目のスウェーデンウイナーとなったエリクソン

 佐藤琢磨(デイル・コイン・レーシング・ウィズRWR)は25位となった。

“前半の100周終了までに5番手まで上がっていられれば勝機アリ!”とレース前の琢磨は語っており、実際に6番手まで上がってみせた。

 しかし、そこからさらに上のポジションに行くことは非常に難しかった。トラフィック内でのパフォーマンスが十分でなかったのが今年の琢磨の敗因だ。

 先頭で優勝争いを行う。そこにフォーカスしたマシンセッティングは、4列目10番グリッドからのスタートにはマッチしていなかったようだ。

「自分たちのマシンが速く、信頼性も高いことはわかっていました。しかし、ローダウンフォースのマシンでは、それをばん回するのが不可能な状態でした。僕たちはハードに戦い、チームは5月を通じて素晴らしい働きぶりを示しました」

「最高のレベルで戦いたいと望み、実際にそうすることができていました。僕たちにはスピードもありましたが、あと少しの幸運が足りませんでした。インディ500で初優勝を果たしたマーカス・エリクソンには心からおめでとうと言いたいと思います」と琢磨は語った。

 エリクソンはインディ500で初優勝。今シーズン初の勝利はキャリア3勝目で、ダブルポイントのインディ500を勝ったことで2022年インディーカーシリーズの17戦中6レース終了時点でのポイントリーダーとなった。

 ホンダはこれで3連勝、そして15回目のインディ500優勝を飾った。次戦は翌週のデトロイト(ストリート)だ。

佐藤琢磨(デイル・コイン・ウィズ・リック・ウェア・レーシング)

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