元王者2チームがアウディRS3 LMS 2導入へ。強豪PWRらが2022年体制を発表/STCC

 2017年からTCR規定を採択するSTCCスカンジナビアン・ツーリングカー選手権の2022年参戦チーム体制が続々と確定し、新規参戦チームからタイトル獲得経験もある強豪まで、今季は第2世代のアウディRS3 LMS 2が大増殖中だ。新たに結成されたエクシオン・レーシングは2台体制でのエントリーに向けシェイクダウンを実施し、強豪ブリンク・モータースポーツも新型モデルへのスイッチを表明。さらに2020年には元世界王者ロブ・ハフを擁し、初のダブルタイトルを手にしたレストラップ・レーシングも、フォルクスワーゲン・ゴルフGTI TCRからアウディへの移行を発表している。

 また、年明けの早い段階でミカエラ-アーリン・コチュリンスキーのSTCCラインアップ離脱を明かしていた王者PWRレーシングは、タイトル防衛と3度目の戴冠に挑むロバート・ダールグレンの残留と、新鋭アクセル・ベングトソンの起用を決めている。

 今季よりカジェ・バーグマンとアイザック・アーロンソンの2台体制でSTCC参戦をアナウンスしたエクシオン・レーシングは、5月に入ってオーダーしていたアウディRS3 LMS 2の納車が完了。その足でアンダーストープへと向かいシェイクダウンを実施するなど、シリーズ開幕を前に精力的な動きを見せた。

「この大きなプログラムの準備が進み、僕自身もやる気が出てきたよ。もちろん、仕事の前に謙虚でありたいと思っているけど、STCCでこれほど良いコンディションを経験したことはない。ここでキャリアハイを狙わないのは嘘だ」と語るのは、昨季シリーズのインディペンデント部門でランク2位を得たアーロンソン。

 一方、今季がデビューとなる16歳のバーグマンは、STCC参戦は「夢の実現であり、同じ目標を共有するチームとここへ来られたのは素晴らしい気分」と抱負を述べた。

「僕はこれまで前輪駆動車でレースをしたことはないけれど、チームと協力し、ドライバーとして成長するため可能な限り良好な環境を作り出すつもりだ」と続けたフォーミュラ・ノルディック出身のバーグマン。

 そのFFツーリングカーとの“ファースト・コンタクト”となったアンダーストープでは、早くもドライビングの楽しみを見出すコメントも残した。

「チームが僕を無線で呼び戻したとき、ピットに向かうのは困難だった。僕はただドライブを続けたかったんだ(笑)。ハンドリングやクルマの感触は本当に素晴らしく、今後の作業を続けるためのデータがたくさん採れた。今から開幕が本当に楽しみだよ」

 若きふたりと新たな船出を飾るエクシオン・レーシング代表のダニエル・アーロンソンも、STCC参戦が「我々の大きな目標だった」と語り、新年度に向けた準備を着々と進行させている。

「今回はドライバーだけでなく、チームのメカニックとエンジニアの双方のために、新しいアウディを使用して充分なマイレージを稼ぐことができた。2日間の生産的なテストは、この先に重要な意味を持ってくるはずだ」

新たに結成されたExion Racingは2台体制でのエントリーに向けシェイクダウンを実施
今季がデビューとなる16歳のバーグマンは「チームが僕を無線で呼び戻したとき、ピットに向かうのは困難だった」とアウディでの初走行に好感触を得た
Brink Motorsportは、ホワイトとグレーにイエローをあしらった「おなじみのパターンをリフレッシュしたバージョン」で新シーズンに挑む

■PWRは、現王者の残留とともに21歳の女性ドライバー起用を発表

 一方、2022年もトビアス・ブリンクをエースに、古巣復帰のヒューゴ・ネルマンと2台体制を敷くBrink Motorsportは、今季より投入する新世代アウディのカラーリングを公開。ホワイトとグレーにイエローをあしらった「おなじみのパターンをリフレッシュしたバージョン」で新シーズンに挑む。

 そしてWTCR世界ツーリングカー・カップ経験者であるバックマン兄妹の長兄アンドレアスの起用と、若きエースとしてチームを牽引してきた23歳のオリバー・セーデルシュトレームの残留をアナウンスしていたレストラップ・レーシングも、改めてアウディへのスイッチを表明した。

「この決定はSTCCでの競争力を維持し、最新のTCRモデルでタイトルを争うという目標を達成するため、我々にとって重要なスイッチになる」と語ったチーム共同創設者のフレデリック・レストラップ。

「新しいアウディは、より多彩なセットアップの可能性を備えた、かなり有能なレースカーだ。チームとしても、ドライバーの好みに合わせてクルマをより良く調整することが可能になるはずだ」

 そして、2021年もクプラディーラー・チームPWRレーシングとして参戦し、ダールグレンが2度目の戴冠を果たしたPWRは、現王者の残留とともに21歳の女性ドライバー起用をアナウンスした。

「アクセルがチームに加わったことで、PWRとしても才能のあるジュニア世代のドライバーを、新しくこの世界に送り出すという姿勢を継続する意思を示せた。この若い才能とロバートの経験という組み合わせは、2022年のタイトル防衛に向けた強力なラインアップになる」と語ったチームマネージャーのマーカス・エクストロム。

 コチュリンスキーの後継者としてPWR入りを果たしたベングトソンは、レーシングカートでの経験を頼りに昨年のクヌットストープでSTCCのトライアウトに参加。そこで初めてTCR規定ツーリングカーのステアリングを握っている。

「STCCで最高のチームに加入するチャンスを得て、強力な資産やノウハウを背景に、本当に才能のある人々と仕事をすることは素晴らしい出来事だと感じている。ロバートより優れたチームメイトを探すことなんてできない」と語ったベングトソン。

「彼が得た経験と成功を収めた経緯を学びたいし、私たちはお互いをうまく補完し合っていると思う。今季はつねにフィニッシュし、可能な限り多くの情報を入手することに専念したい。そしてチャンピオンシップでもできるだけ多くのポイントを獲得できるよう、徐々にペースを上げていく必要があるとも思っている」

 今季STCCでのレースシートを後進に譲る格好となったコチュリンスキーは、初年度よりレギュラー参戦するワンメイク電動オフロード選手権エクストリームEでの活動と並行し、2018年に初代PWR001の開発ドライバーを務めた経験も加味し、PWRの新たな電動ツーリングカー開発計画『EPWRプロジェクト』の主軸として、プロトタイプPWR002の開発に従事することが発表されている。

改めてアウディへのスイッチを表明したLestrup Racingは、アンドレアス・バックマンとオリバー・セーデルシュトレームとともにシーズンを戦う
タイトル防衛に向け残留を決めたロバート・ダールグレン(左)と、PWR新加入のアクセル・ベングトソン
今季STCCレギュラーを退いたミカエラ-アーリン・コチュリンスキーは、初代PWR001の後継モデル開発に精力を注ぐ

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