「来年また会おう」ウクライナと対戦、バックス福藤らが願う平和

表彰式後に記念撮影をした日本、ウクライナ、ポーランドの各国代表選手ら=ポーランド国内(福藤選手提供)

 ポーランドで1日まで行われたアイスホッケー男子の世界選手権ディビジョン1B(3部相当)を戦ったHC栃木日光アイスバックスの日本代表3選手が28日までにオンライン取材に応じた。戦争や新型コロナ禍で、不安や複雑な思いで臨んだ大会。日本は戦中のウクライナとも対戦し、閉会式後は記念撮影も。選手たちは「改めてスポーツの素晴らしさを感じた」「戦争が終わって早く日常に戻ってほしい」と平和を願った。

 バックスから日本代表に選ばれたのはGK福藤豊(ふくふじゆたか)(39)FW古橋真来(ふるはしまくる)(28)FW鈴木健斗(すずきけんと)(27)。民間機が撃ち落とされたというニュースも耳に入り、「無事に帰って来られるか分からない」(古橋)。妻が妊娠中だった鈴木健は「家族に寄り添った方がいいのでは」。心配事ばかりが頭を巡った。

 ロシア、ウクライナ上空は航行できないため、迂回(うかい)ルートとバスで現地入り。しかし街は想像以上に穏やかだった。とても陸続きの戦争の隣国とは思えない。福藤は「もっと厳戒態勢なのかと思ったが…」と拍子抜けしたという。

 ただ試合会場には特別な熱気があった。ウクライナ戦では、多くの観客がウクライナ国旗を振るなどして応援。国際舞台での経験豊かな福藤も「開催国でないのにあれだけの応援が入るのはあり得ないこと」と驚いた。

 試合が終われば互いをたたえ合った。握手をし、言葉を交わす。古橋は「スポーツにしかなし得ないこと。これまで以上に国を思って戦っていたと思う」と振り返った。

 閉会式後、チームで記念撮影するウクライナに、ポーランド、日本が合流する形で集合写真を撮った。「ウクライナを応援するという意味で、共に戦った国同士で一緒に写真を撮った。通常ならないこと」と福藤。

 世界ではウクライナ侵攻を続けるロシアやその友好国が排除される流れになっている。だが鈴木健は北米NHLで活躍するロシア選手の例を挙げ、「(スポーツ選手は)武器を持っているわけではないので、普通に戦わせてあげてもいいのかなとも思う」と複雑な心境を語った。

 ウクライナとは次回大会でも同じグループで対戦する。古橋はウクライナの選手たちに「来年もまた会えるといいな」「来年もまた戦おう」と声を掛けた。

日本代表として世界選手権を戦ったバックスの鈴木健、福藤、古橋(左から)=ポーランド国内(福藤選手提供)

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