海外投資家は2022年も投資意欲が強いまま ~CBREがレポート、選別姿勢を強める動きも~

シービーアールイーはこのほど、海外投資家の2022年の投資対象を見通すレポートをまとめた。2020年から2021年の日本の不動産投資額において、海外投資家が占める割合は3割前後で推移。コロナ下でも日本の不動産投資市場に対する海外投資家の関心は薄れていない。2022年も海外投資家の投資意欲は高く、特に物流施設や住宅については、国内投資家を凌ぐ強いバイヤーとなる可能性がある。また、大型取引にも引き続き意欲的に取り組むと予想。ただし、米国の金利上昇による円安の進行やウクライナ情勢の悪化を背景に日本経済の先行きには依然として不透明感が残る。そのため、海外投資家はこれまで以上に選別姿勢を強めることになると見通す。

レポートでは、海外投資家の取得意欲が国内投資家を上回る背景として、資金調達コストの低さに加え、アジア太平洋地域の他の国・地域に比べて流動性が高いことと指摘。また、海外で地政学的リスクが高まる中、相対的に日本に対する安心感が高まっているとも考えられるとした。海外投資家の約7割が、2022年は前年と比べて取得額を増加させる意向を示す中、特に物流施設と住宅について強気の価格水準を想定している。物流施設は、コロナ下においても賃貸需要が拡大している。長期契約による安定性に加えて、緩やかではあるが賃料の上昇についても投資家は投資妙味を感じていると分析。また、住宅についても、安定性の高さだけでなく、都市によっては賃料上昇も期待できることが高い意欲につながっていると見る。
海外投資家の取引対象が大型化していることも指摘。2022年も、1000億円を超える複数の入札案件に多くの海外投資家の名前が挙がった。過去の海外投資家による取引の価格帯別の件数割合を見ると、100億円以上の件数割合は2014年から上昇し始め、2017年以降は概ね5割前後で推移した。投資対象が大型化する主な理由を2点挙げた。1つ目は、国内投資家と比較して日本の組織が大きくないこと。投資家によっては、限られるマンパワーで効率的な投資を行うため、より大きな案件を選別しているためとする。2つ目は、投資戦略の多様化。海外投資家においては従来から高い利回りを目的とするバリューアッド投資が中心だった一方で、2014年頃からはコア投資も増加している。コア投資は安定性を重視してリスクを抑えた投資を行う。条件を満たす優良な物件を志向する結果、高価格帯の物件が投資対象となりやすい。
今後、日米間の金利差がさらに拡大することで円安が引き続き進行するが、円安は海外投資家が日本の不動産を取得する際に基本的にはプラスに働く。ただし、地政学リスクならびに物価上昇率の加速など、景気先行きの不透明感が高まっているため、海外投資家は選別姿勢をより強めると予想する。

2022/5/5・15 不動産経済ファンドレビュー

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