伝説的ラップグループ誕生秘話ドラマ『ウータン・クラン:アメリカン・サーガ』 スチャダラANIが激レコメンド!

『ウータン・クラン:アメリカン・サーガ』© 2019 Imagine Television, LLC. All rights reserved.

ファン垂涎のウータン誕生秘話

どうもアニです。

ディズニープラスで配信中の、ラップグループ「ウータン・クラン」の結成から1stアルバムが発売されるまでを描いたドラマ『ウータン・クラン:アメリカン・サーガ』を観ました。

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ウータン・クランはニューヨークはスタテン島出身の8人組で、1993年にリリースしたデビューアルバム「Enter The Wu-Tang 36Chambers(邦題「燃えよウータン」)は、ヒップホップの枠を超えて世界中で大ヒットした名作アルバムとなりました。何年か前にはユニクロでもTシャツが売り出されるほどの有名なラップグループです。

そんな彼らがどういう風に結成されて、この歴史的なアルバムができたのか、というのを描くドラマシリーズです。今のところシーズン2まで配信されていて、シーズン3に続きそうな感じです。

『ウータン・クラン:アメリカン・サーガ』© 2019 Imagine Television, LLC. All rights reserved.

これまでもラッパーの半生とかを描いたものは結構あったけど(エミネム、ノトーリアスB.I.G.、50セント、2PAC等)、どれもソロのアーティストで、グループの話といえばN.W.A.の『ストレイト・アウタ・コンプトン』(2015年)くらいでしょうか。

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ウータン・クランのこのドラマは、2シーズンかけてじっくり描いていきます。シーズン1ではグループがまだ結成されてないくらいの頃、グループ結成前夜のイロイロとかメンバーの名前の由来などを詳しく描いています。

リーダーのRZAの自伝が基になってるので、基本的にはRZA(劇中ではボビー)を中心にどういう風にグループができて、どうやって1stアルバムが完成したのかが細かく描かれてるので、ファンとしてはたまらないです。

RZA アシュトン・サンダーズ 『ウータン・クラン:アメリカン・サーガ』© 2019 Imagine Television, LLC. All rights reserved.

ちなみに「Enter The Wu-Tang 36 Chambers」はワタクシのヒップホップベストアルバムの5枚の中に入るくらい大好きなアルバムで、いまだに聴いてるアルバムだったりします。なので、このドラマをやってくれて本当に嬉しかった。

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当時すごく斬新だった8人組ラップグループ

RZAはウータン・クランでデビューする前に「プリンス・ラキーム」という名前でTommy Boyレコードからシングルを1枚出してるんだけど、売れ行きが芳しくなくて、結局その1枚だけで契約を切られてしまうのですが、その辺の経緯もシーズン1で詳しく描かれています。

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初めてのレコードだったので、よくわからないまま、本当にやりたいことよりもレコード会社の意見を聞きすぎて、自分の望む形じゃなくなっていってしまう過程とか、まぁよくある話だったりするけど。

最初のシングルを作って、プロモーションツアーで全米各地でライブやったりサイン会したりするんだけど、Tシャツの綴りが間違ってたり、途中でサンプリングの許諾が取れなくて曲を作り直さなきゃいけなかったりと、大変なことが次から次へと起こります。マニアとしては、そのボツになったレコードの存在が気になるところではありますが。

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その失敗を教訓にウータン・クランを作っていく過程がとても面白い。プリンス・ラキームはポップ路線で売り出して失敗したので、次はもっとリアルな自分たちの感じを出していこうと決めます。ラフでザラついた感じを。

ウータン・クランはカンフー映画のセリフとか効果音を多用して独自のノリを出してるグループで、自分たちの地元スタテン島のことをシャオリン(少林)と呼んでたりします。その好きなカンフー映画もショウ・ブラザース系のが多くて、イマイチ馴染みの薄いものが多かったりするけど、そこも逆に良かったりします。

『ウータン・クラン:アメリカン・サーガ』© 2019 Imagine Television, LLC. All rights reserved.

それまでのラップグループって3人とか4人、多くても5人くらいが普通だったので、8人組というのは当時すごい斬新だったんですよ、今じゃそんなこともないけど。

何組かのグループやソロアーティストが集まって、みたいなのはあった(ジャングル・ブラザース、デ・ラ・ソウル、トライブ・コールド・クエスト等のネイティブ・タンとか、ビズ・マーキー、ビッグ・ダディ・ケイン等がいたDJ/プロデューサーのマーリー・マール率いるジュース・クルーとか、ノーティー・バイ・ネーチャー等のフレーバー・ユニットとか)けど、8人組のグループでデビューして、その後それぞれがソロデビューするみたいなのって画期的だったんです、当時は。

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90年代のファッションってやっぱいいな

このドラマではシーズン2に入ってやっとデビューアルバムを作り出すんだけど、その過程も面白い。メンバーの大半がデビューするまで裏稼業(主にドラッグの密売)をやってて、本当は音楽で食っていきたいんだけど、音楽じゃ食えないと思ってるから密売もやめられない。

地元で有名な不良を誘って仲間に入れて、機材やスタジオ代を工面したりして、とりあえずシングルを自主制作するんだけど、全員素人なので売り込み方がわからない。それで手分けしてラジオ曲にリクエストしたり、サクラを使ってレコード店に売り込んだり、大学のパーティーに潜り込んで大学生にプロモーションしたり。そういった手弁当でやってるところとか、その後アルバムが大成功するのは知ってるけど結構大変だったんだな、と見てて思いました。

『ウータン・クラン:アメリカン・サーガ』© 2019 Imagine Television, LLC. All rights reserved.

あと、90年代初頭のお話なので、カセットテープとかフロッピーディスクがやたらと出てくるのも個人的には良かった。メンバーのファッションも90年代を結構忠実に再現してて良いです。この頃のファッションってやっぱいいな、と思いました。あと好きな映画の好きなシーンを再現してるのも面白かったです。再現してるのはカンフー映画なのにスニーカー履いてたりして。シーズン2は、まだシリーズが続きそうな終わり方だったので楽しみです。

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このドラマはアメリカのHuluオリジナル作品で、日本での配信はディズニープラス。ちなみに“あなたへのおすすめ”等に一切出てこなくて、知り合いが教えてくれたことで配信を知ったので、もうちょっとAIしっかりしてほしいなと思いました。

『ウータン・クラン:アメリカン・サーガ』© 2019 Imagine Television, LLC. All rights reserved.

ウータン・クランを知っている方はもちろん、ドラマとしても単純に面白いので、皆様にオススメです。じゃあ、またまた。

文:ANI(スチャダラパー)

『ウータン・クラン:アメリカン・サーガ』はディズニープラスで独占配信中

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