持続可能な農水産業 確立へ 「平戸市ブランド化推進協」設立15年 アンテナ店で認知度向上、地域商社の新設目指す

平戸の人気商品を組み合わせた独自のギフト商品等を販売する通販サイト「平戸商店」

 長崎県平戸市が市内の経済団体など16組織と設立した「市地域資源ブランド化推進協議会」が15年目を迎えた。これまで東京、福岡など大都市圏を中心に地場産品を売り込み、東京都内などへのアンテナショップ・飲食店出店などで消費者の認知度アップに努めてきた。本年度は地域商社の設立に動き出し、持続可能な農水産業の確立を目指している。
 「平戸ってどこ?」-。同協議会を設立した2008年当時、平戸の農水産物は取引先などで高く評価されている一方、消費者に十分知られていなかった。
 市は主流だった広告や短期のイベント出展、イベントの委託開催など旧来型のPR手法を刷新。福岡、関西圏での取引を視野に入れた物産展や情報発信、市場調査のためのモニターツアー実施、ギフト商品開発など、同協議会中心の活動に切り替えた。
 近年、15年近くの活動が実を結び始めている。東京都内に出店した市単独のアンテナ飲食店は新型コロナウイルス禍でも、ランチ時間帯は行列ができるほどの盛況が続く。市は「大都市圏の消費者に平戸の産品が定着している」と評する。

平戸市が単独で運営するアンテナ飲食店=東京都千代田区有楽町(平戸市提供)

 一方、市内の生産者に対する商品開発や加工場開設への市の事業費補助制度も充実。自家消費向けの漁獲物や生産物などを使った加工品を新たな収入源にしてもらうためだ。開発に不可欠な技術を持つ事業所や、販路確立に役立つバイヤーの紹介などで意欲ある生産者を後押ししている。
 農家、漁業者のほか、公設民営の平戸瀬戸市場(田平町)や民間のひらど新鮮市場(岩の上町)などが開発した約70点が市場にデビュー。買い物客に定着した商品も少なくない。
 この制度を活用して加工品を販売する50代の男性農家は「支援はありがたいが、利益につながる保証はない。積極的に投資を続ける余裕がない」。制度は評価しつつ経営環境の厳しさを語る。
 市は5月、通販サイト「平戸商店」を開設。運営受託業者が製造業者・生産者の枠を超えて組み合わせたギフト商品を開発、販売している。生産者と民間企業が主導し、安定した出荷と売り上げ増を目指す地域商社新設を目指し、委託先事業所の公募を始めた。
 事務局の同市物産商工課は「意欲ある生産者、事業者の支援を続ける。持続可能な農水産業にするため、新たな地域商社や市の施策に頼り過ぎず、自立を目指してほしい」と呼びかける。


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