<北朝鮮内部>食糧無償配布を一部都市で実施 コロナ封鎖で飢え拡散しようやく

北朝鮮のコロナ対策は過剰。中国との国境の川・鴨緑江の川辺で防護服を着て堤防修復作業をしている。2020年10月に中国側から撮影アジアプレス

北朝鮮当局が先週、複数の都市で住民への食糧配布を実施したことが分かった。新型コロナウイルスの感染拡大防止策として採られた都市封鎖や自宅隔離によって、食糧を調達できない住民が続出し、不安が拡大する中、栄養失調で落命する人も出ていた。遅まきながら政府が重い腰を上げた格好だ。(カン・ジウォン/石丸次郎

◆封鎖、隔離で餓えて死者が発生

金正恩政権は5月12日にコロナの感染拡大を認めた。すぐに採られた厳格な防疫策によって、自宅隔離になったり、市場が閉鎖されたり、丸ごと封鎖される都市や区域が増えるにつれ、外出を禁止されて食糧を調達できない住民が急増した。

不安、不満の声が強まり、老人や幼児に飢えて死亡する人が発生するに及び、当局はようやく食糧配布を実施した。アジアプレスでは、国内に住む複数の取材協力者の調査によって、北部の複数都市でこれを確認した。ただし、食糧配布が全国規模で実施されたのかはわからない。

北部の咸鏡北道(ハムギョンプクド)のA市とB郡では、5月22日頃に、国営の食糧販売所を通じて、1キロ当たり白米4000ウォン、トウモロコシ2000ウォンの、閉鎖前の市場より少し安い価格で、1世帯当たり5日分を販売した。

「飢えに直面している困難世帯には数日分を無償で配布した」と、B郡に住む協力者は言う。
※1000朝鮮ウォンは約19円。

両江道(リャンガンド)の恵山(ヘサン)市は、他地域より早い14日に市域全体がロックダウンされ、住民は一切の外出が許されなくなっていた。住民たちはそれだけ早く飢えに直面することになる。

複数の協力者によれば、恵山市では25日に15日分の食糧が無償で配布された。1日分は職場に出勤する人は650グラム、扶養家族の主婦は450グラム、生徒は350グラムのトウモロコシだったという。協力者の1人は20%は白米だったと述べたが、量と配布時期は同一だった。

「コロナよりも飢えの心配をしていた住民たちは大喜びしている。軍の戦時用備蓄食糧を放出したらしいという噂がある」

協力者の1人は恵山市の空気をこう伝えた。

なお恵山市では、近隣の協同農場の人手不足が深刻なため、支援動員が見込める工場や企業の人員の移動をできるようにするため、一部区域で封鎖を解いたが、30日現在、市のほとんどの地域ではロックダウンが続いている。

※アジアプレスでは中国の携帯電話を北朝鮮に搬入して連絡取り合っている。

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