名声に隠されたオードリーの本当の姿を描く初の長編ドキュメンタリー映画『オードリー・ヘプバーン』公開記念、GENKINGが語る"180度変わったオードリーのイメージ"

5月6日(金)より公開され、大ヒット公開中のドキュメンタリー映画『オードリー・ヘプバーン』。 永遠の妖精と呼ばれ、美の概念を変えたと言われるほどの美貌と存在感で、大スターとしての名声を得たオードリー。しかし、世界中から「愛された」彼女は一方、実生活では愛に恵まれない半生を送った。多くの悲しみと孤独を抱えながらも、「人生の最後に、自分のことを好きになれた」と語る彼女の本当の姿とは──。 この度、映画『オードリー・ヘプバーン』の公開を記念して、5月30日(月)に東京・渋谷のBunkamura ル・シネマでの上映後にタレントで美容家のGENKINGのトークイベントが開催された。 オードリーをイメージした白いドレスとメイクで登場したGENKING。

「眉毛が特徴的なので、メイクさんと相談して眉毛を濃くしていただき、アイライナーもはね上げて、髪も普段はまとめないんですが、今日はグリグリにまとめました」

と笑顔を見せる。

オードリーについて、これまで

「『ローマの休日』の大女優さん」

というイメージを抱いていたというが、本作を見て

「180度変わりました」

と明かす。

「とにかく愛が深くて、いわゆる“大女優”とはかけ離れた方だなと感じました。私は自分が子どもを産めないので、ユニセフのシーン、小さなお子様を助けているシーンは心に響きました。私もいま、子どもを産めないなりに、いろいろやりたいと思っているので、そういうのも踏まえて、胸が熱くなりました」

と慈善活動で子どもたちに深い愛情を注ぐオードリーの姿に、心を動かされたと語る。

また、オードリーの美しさに関しては

「容姿が美しいのはもちろんですが、私はそういう外見的な美しさよりも、心がきれいな方が好きなので、(映画の中のオードリーを)見ていてキュンとなりました。いろんな困難を乗り越えて、無償の愛を与えていく──そうすることで自分も愛が満たされていく。だから、年齢を重ねていくにつれて、彼女は満たされていったんじゃないかと感じました」

と語った。 映画では、幼い頃の父との別れが彼女に与えた影響や、その後の人生で彼女が抱え続けることになった“孤独”が描かれる。2015年に芸能デビューし、その後、性別適合手術を受けて女性となったGENKINGだが、芸能界に入るまでは

「満たされないことばかりだったし、自分には幸せなんて来ないだろうと、後ろめたい気持ちで歩いていた」

と明かす。だからこそ、オードリーの人生に自身と重なる部分を感じたようで、

「年齢を重ねて、夢に向かってあきらめずに進むこと、あとは無償の愛──ファンの方とのコメントのやりとりで支えられたりして、年齢を重ねたほうが私は幸せを感じているので、そういう部分も似ている気がしました」

と語る。

GENKING自身は、どのようにして、そうした前向きな気持ちを手に入れることができたのか? という質問には

「関わっていく人が笑ってくれたり、想像とは逆の言葉が返って来ることで嬉しさが増すことが多かったです。絶対に『気持ち悪い!』と思われるだろうと思いながらデビューして、アンチコメントもいっぱい来るだろうと思ってたんですが、そういうのは全然なくて、むしろ励ましの言葉をもらって『時代が変わってきたんだな』と感じました。幼少期はイジメられたし、イヤな言葉をいっぱい掛けられて、それがトラウマで『また同じこと言われるんだろう』と思いながらTVに出たんですけど、真逆で、そういったことから新しい発見ができて、人に優しくされると、自然と『恩返ししたい』ともっと優しい気持ちになれました。周りの方が優しくしてくれたからこそ、満たされて頑張れているんだと思います」

と周囲の優しさによって、変わることができたとふり返った。

デビューから7年目を迎えて「いまが楽しい」と笑顔を見せるGENKING。

「最初の2~3年は、記憶がないくらい、いろんなことが大変だったので、それを振り返ると成長したなと思います(笑)。デビューした当時は彼もいなかったし、仕事に一生懸命でしたが、好きな人に出会って、仕事よりも大切なことが初めて見つかりました。私は生まれた時から全てが困難で、恋愛なんてできるはずもなかったし、中学生や高校生の多感な時期にいろんな経験をされた女性も多いと思いますが、私の場合『洋服も体操着もなんで(自身が考えている性別と)違うんだろう?』というところから始まったので、ようやく30歳手前で遅れた思春期が来て、洋服や髪型、ネイルとか、みんなが高校生の頃にやったことをようやくできるようになって、そこから人生が楽しくなりました」

と充実した表情を浮かべる。

没後30年近くが経っても、変わらずに愛され続けるオードリー。GENKINGは時代の変化に惑わされずに生き抜くための“強さ”について、こう語る。

「いまの時代、SNSが普及していて、みんなそれぞれの人生の一番楽しかった時、良い時を載せていると思うけど、それが全てじゃないと思っていて、どんなに成功していると思われている方でも、裏で悩んでたりする。目に見えるもので全てを決めつけないでほしい。私も昔は、自分が恋愛できなかったので、親友が結婚すると聞いて、『おめでとう!』と思いつつ、自分ができない苦しさや悔しさで、なんとも言えない気持ちになって、心から祝福できずにいたりしました。でも、そういう気持ちでは自分自身もハッピーにならないので、オードリーのように見返りを求めず、みんながハッピーになって、笑顔になるような生き方をしていると、回り回っていつか自分に返ってくるんだなと思っています」

またGENKINGは、女優として第一線で活躍していた時期に、家庭に入ることを決めたオードリーの“強さ”や“決断力”にも深く共感したよう。

「私も、TVに出始めた時、(自身の性自認や性的指向について)カミングアウトしたほうがいいのか? しないほうがいいのか? どうするのか? と事務所の方向性も分かれて話し合いが持たれたりもしたんですけど、私自身は自分の方向性が決まっていたので、周りから『カミングアウトしないほうがいい』と言われても、批判はあるかもしれないけど、突き進む勇気があったし、結果がすぐ出ないであろうとも、やり続けていくことがすごく大切だと思っていました」

とブレずに自分が進むべき道を進むことの重要性を口にした。

最後にGENKINGは、来場した観客に向けて

「コロナ禍ということもあって、思うようにいかなかったり、私自身も壁にぶつかることがすごくあります。でも、人間、いまがすごくつらいと思っても、“今日”だけが結果だと思えば『良くなかった』と思ってしまうものだけど、私は死ぬまで全てが過程だと思っています。乗り越えてみると、悔しかった涙も悲しかった涙も嬉し涙に変わると思います。『“口”に“プラス”と書いて“叶う”』という言葉を私はずっと言ってるんですけど、ネガティブな気持ちになりそうな時こそ、鑑の前でニヤっと笑ってみると、『何やってるんだろう?』と思いつつ、またニヤっとしてくるもので、そういうことが大切だなと思います。いつどうなるかわからない人生なので、周りに気を遣わず、自分がやりたいことをやって、嫌われたっていいので、もうちょっとみなさん、自己中で生きていただければと思います!」

と力強く呼びかけ、温かい拍手の中でトークイベントは幕を閉じた。

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