「空中展望の丘」で癒しの時間 八重岳べーカリーが店舗周辺に散歩コース 沖縄・本部町

 【本部】本部町伊豆味の八重岳で全粒粉パンの製造・販売会社「八重岳ベーカリー」を経営する比嘉恵美子さん(78)は昨年10月、店舗周辺に散歩コースを整地し、山頂に「空中展望の丘」を開いた。45年ほど前に知人らと購入した約3万3千平方メートルの土地を整備。コースには沖縄の格言や聖書の句などが書かれた看板を約20カ所に設置した。比嘉さんは「景色を楽しみながら癒やしや充足を感じてほしい」と話している。

 恵美子さんは1944年名護市生まれ。名護高校を卒業後に米ハワイに留学し、帰国前に立ち寄ったカリフォルニアで留学生の比嘉純さん(82)=北中城村出身=と出会って結婚した。医師になった夫が西原町のアドベンチスト・メディカル・センターに派遣されることになり、76年に沖縄に戻った。

 病院で通訳を務めていた際に米国人医師が「白いパンではなく、栄養のある全粒小麦のパンを食べる方が健康によい」と患者に指導していたが、「どこで買えるのか」との患者の質問に答えられなかった。

 「沖縄の人の健康のために自分で作ろう」と、全粒粉・植物性の「黒パン」を試行錯誤しながら自宅のオーブンで作り上げた。77年に八重岳に工場兼店舗を構えた。購入した八重岳の土地は一部開墾し、農場や自宅、教会、保養施設などを整備した。「自然に触れながら心と体を癒やせる場所にしたかった」

 昨年10月、セメントを敷いた全長約3キロの遊歩道を整備した。「意地ぬ出(い)じらぁ手(てぃ)引き 手(てぃ)ぬ出(い)じらぁ意地引き(手が出そうになったら怒りを鎮めよ)」という沖縄の格言や、「いつも喜んでいなさい 絶えず祈りなさい すべてのことに感謝しなさい」という聖書の一節などが書かれた看板を沿道に設置した。

 歩行が困難な人向けに今後はゴルフカートの導入も検討している。シークヮーサーが食べ頃を迎える12月ごろには、入園者にシークヮーサー狩りも案内する予定だ。

 八重岳ベーカリーでパンなどの商品を購入した来場者は、無料で「空中展望の丘」に入場できる。問い合わせは八重岳ベーカリー(電話)0980(47)5642。

(松堂秀樹)

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