カツオ?昆布?水の違いで生じる「出汁」の常識とは【日本東西・食文化対決】

東西南北に国土が広がる日本では、西日本と東日本とでその「食文化に違いがある」こともよく注目されますよね。それぞれの地域で違う常識を味わうのも、旅の醍醐味と感じている人も多いのではないでしょうか。そこで今回は、「出汁」について研究してみました。

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出汁の「原料」にはどんなものがあるの?

素材から旨味を抽出し、味わいのベースとする「出汁」は、日本特有の食文化といわれています。

出汁の原料として代表的なのは、かつお節、昆布、煮干しの3種。小学校の調理実習で、これらの材料を使って出汁を取った経験を持つ人も多いのではないでしょうか。このほかにも、さば節やむろあじ節、焼きアゴ、椎茸などもよく出汁に使われます。

地域ごとに違うさまざまな出汁

出汁を取るときは、単一の原料でとる場合もあれば、いくつかの材料を組み合わせる場合もあります。どんな原料を使って、また、それをどんな割合でブレンドするかによって、それぞれの地域の出汁の味わいに変化が生じます。

例えば、昆布の生産量が全国一位の北海道では、出汁の材料も昆布が中心です。また、中部地方では、さば節やむろあじ節、九州地方では、煮干しや焼きアゴを使った出汁が一般的となっています。

こうして見てみると、出汁は地域ごとに細かな違いがあることがよくわかります。その土地ごとの特産品や生産量、流通量などによって出汁のメインとなる原料が決まり、地域の食文化の形成に大きく影響を与えているようです。

関東・関西の出汁文化の歴史的背景とは

出汁の違いで比較されることが多いのが、関東・関西の食文化です。関東は「かつお出汁」、関西は「昆布出汁」で語られることが多いですが、これにはいくつか理由があります。

まず注目したいのが、それぞれの「水」の違い。関東は「水の硬度が高い」ので、昆布出汁が出にくいといわれており、かつお節を主に使用するようになったとも言われています。一方、関西は昆布から出汁を引き出すのに適した「硬度の低い水」で、昆布出汁の文化が定着したという説です。

もう1つ無視できないのが、「流通網」の違いです。昆布が出汁として使用されるようになったのは江戸時代のこと。当時、北海道から出発した商船「北前船」は、日本海を南下し大阪で荷下ろしを行っていました。この「西回り航路」の発達で上質な昆布が大阪に入るようになり、そこで売れ残ったものが江戸に渡ったとされています。このように、関東より関西のほうが昆布の流通量が圧倒的に多かったことも、東西の出汁文化の違いを生んだ理由と考えられています。

東西のうどん出汁は何が違う?

うどん出汁でも、関東・関西の違いは明白。関東では色が濃く、関西では澄んだ色をしているのが特徴です。これは関東では濃口醬油で、関西では薄口醤油で味付けをする風習があるためです。

関東の魚介の風味引き立つかつお出汁には、濃口醤油がよく合います。しかし、関西の昆布ベースの出汁に濃口醤油を使用すると、昆布の風味がかき消されてしまうので、薄口醤油で味付けする文化が広がったと考えられています。

関西の人が東京のうどんを食べてその出汁の色にびっくりする、なんていう話もよく耳にしますが、即席めん「どん兵衛」でも、関東・関西でスープの味を変えて販売していることが話題になりました。実食ルポでは、関東版は色が濃いかつお出汁、関西版は色が薄い昆布出汁で、それぞれ異なるおいしさだったという報告も届いているので、ぜひチェックしてみてください!

参考:

一般財団法人日本educe食育総合研究所

国立国会図書館

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